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”19” 王子と、ネコと猫 ‐3
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健用に処方されてる薬を貰って、安眠とは言えないが、ある程度しっかり眠り。
規定程度の時間で目覚めて。
緩く縛ってたタオルが外れてるのに、部屋は薄闇で。
なんでだ? ん? っと、首を傾げて、理由を鼓膜が拾う。
遠雷と共に、ザアッと窓に強く雨粒が当たる音。
黒雲が夏の午後の日差しを厚く遮って、一段と、部屋が暗くなった。
夕立ね~ 今日は午後、天気が急転とか、聞いてなかったなァ って言うか、
天気予報どころかこっち来てから、テレビすら見てない。
日曜・・・の、今って何時だろうか、薬効が切れてだったら、夕方に差し掛かるくらいの時間かな。
両手で顔に手を当てて、そのまま伸びをしようと腕を上げて
手首に繋がってる紐を引いて、あ、そうだったって、健、いや、カオルの背を向けた後姿を見遣る。
小さく丸まってる身体を、頭まで綿毛布に包まって・・・・・・ん?
健、こんな寝姿するタイプだったっけ?
バリバリと雷光が入り込み、雷鳴が響いて、ピークが近付いて来たなって、窓を見る。
あ、起こしてやろうかな、健。
健って、雷怖いって震えてそうな外見を大きく裏切って、大好きなんだ、あのプラズマ見るの。
雷が鳴ると、窓辺にペッたりくっついて、うっとり眺めてるんだよね。
色味や光具合で、ふふふって嬉しそうに、温度が高いとか、放電具合がいいとか呟いて。
子供の頃は、外に出たがって出ちゃうから、静さんに危なくて見張られてたんだって言うんだ。
高原の天気は変動が激しく、夏の雷雨は定番といえば定番。
去年の夏も、わざわざ、家中の明かりを落としてまで観察してたもん、綺麗だなって。
枕元に投げ出されてる文庫本を片付けてやり、寝そべったまま移動して綿毛布を捲れ・・・あれ?
内側から引っ張って剥がされまいとして、縛られて不自由なままの両手で押さえてた。
「もしかして、カオル君は、雷、ダメなの?」
「ちっ、がい、ま・・・ひゃっ!」
轟音を立てて、どこか近くに落ちたみたいな雷に、更に声を震わせ、悲鳴を上げて身を縮める。
カオルは・・・大の苦手みたいな、感じ?雷。
益々、荒天具合は凄まじくなって、ゲリラ豪雨的な勢いで窓を叩く雨音と
ひっきりなしに光り、鳴り響く雷鳴。都度、ビクンビクンと身体を震わせて、小さくなろうとするカオル。
苦手ってレベルじゃないな、この怖がり様は。
「カオル君、怖いんでしょ。無理しないで、ほらおいで?ちょっとは違うから」
亀の子状態のカオルを腕に抱きこんで、静さんの秘儀、お背中ぽんぽんしてあげる。
やわやわしてた抵抗が、めっちゃ近距離に落ちたって感じの光とほぼ同時の轟音に怯えきって
声にならない悲鳴を上げて、毛布を放り出し、縛られた手のまま縋ろうとする。
うわ、なに、去年の、この絵を期待した俺が、大喜びしそうなシュチュエーション。
紐を解いてあげるなり、ぎゅうって、ガタガタ震えて抱きついて来るんだ、可愛い~。
そっと、顔を覗き込んで見たら、きゅんとする、超うるうるな涙目!
そう、これこれ! こんな可愛いのを期待してたんだってば、俺は。
ガラガラ! ピクン! ガラガラガラ!! ビクッ、ピクン!! で、ギュー!
小さな喉奥から出てる悲鳴を飲む声も、めっちゃ可愛い、カオルを存分に甘やかし。
雲間から光が漏れ出し、雨量が収まって、雷鳴も徐々に遠ざかるまで1~2時間程度。
俺は至福のひと時を過ごしてしまった。
正気付いたカオルが慌てて、腕から逃れて、謝ろうとする。
「謝るの、もう、カオル君は禁止ね」
「でもっ、ご、ごめんなさい。こ、こんな、は、恥ずかしい・・・」
「え~俺は、めっちゃ幸せでした~。雷、ダメで、抱きつかれて介抱してあげてって憧れだった~」
「僕、これだけは、苦手・・・ひぃっ!」
最後におまけみたいに轟音がして、自ら離れた身体を、また押し付けてきた。
「まだ、完璧に雷様がいなくなるまで、俺に甘えてて?
ね、良かったらさぁ、このままなんか話そうよ?カオル君は嫌かな」
くぐもった小さな声で、お願いしますって、聞こえて。
嬉しくなって、ちょっと力を入れて、抱き、側臥で二人向かい合って抱き合ってるみたいになる。
しかも、ちょっと汗ばんだ小さな頭は俺の胸の辺りにあって、こてんって額が当たってて。
ゆるく回した手で、背を、腕枕まがいの位置で、髪を、撫でれてる。
鼓動が早まってるけど、どこか満ちてて、穏やかな触れ合いで、なんかすごくいいなって感じる。
「健はさ、期待はずれで、全然、怖がらなくてさ。逆に」
「健に、雷が鳴ると、すぐに代わってもらって、僕はベッドに逃げちゃうんです。
僕、一人で小さい頃、佐倉家でお留守番の時に、近くの杉の木に雷が落ちたんです。
お祖母ちゃん、お買い物に行ってて、すごく怖くて。あの時が蘇って来ちゃ、うわっ!まだ・・・」
「もう、遠雷だよ。外も、夕焼け空になってきてる。佐倉家にベッドあったっけ?」
ひくって、カオルが身動いて、何か戸惑ってる気配。
そのすぐ後、ひとつ溜息をこぼして、いつものカオルの口調に戻った。
「あの・・・お話、このまましてもいいですか?」
「ん?喜んで~、なんでも、話して。気持ちいいね、これ」
「えっと、僕らのベッドは、健の心の中にあるベッドのことです。
僕達、出番じゃないときは、そこで眠ってるんです。出番のときは・・・」
え?、わっ!!
そ、それだ、横山が聞き出せって言ってたこと~。
のんびり、くつろいでる場合じゃないこと話し出したよ、カオルっ。
「ちょ、ちょっと待って。それって・・・」
「あ、えっと、ダメですか?ちゃんと、起きて話さなきゃ」
なんだか、その声色が、すごく辛そうで。
横山には出来たら、録音しろって言われてたのを、このまま一先ず聞こうって思わせた。
健の深層心理のスイッチ切り替え、もしくは、構造。
カオルは、とつとつと、まるでピロートークみたいに
俺の胸に半ば顔を埋めて、ホッとして、話し出した。
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