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”21” 猫地図、鋭意作成中 ‐4
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いかん、いかん。
とぷるぷる頭を振って、ちょっと立ち上がってみた。
?って疑問符いっぱいに、俺を見上げるから、誤魔化して伸びをしてみる。
「もう、けっこう遅い時間ですか?」
「ううん。まだ、そんなには。ちょっと、根詰め過ぎて肩凝っちゃった。カオル君は平気?」
「はい、僕、眠ったんで。探しに行くつもりなかったから、怖かったです。
ライト持ってないし、命綱も着いてなくて。でも、落ちたおかげで佐倉家と洋館の入り口が分かったかも」
「前、言ってたよね、この二つの部屋の向こうが、古い佐倉家なんだって」
二枚の絵を囲うように、ぐるーっと指で輪を描いたカオル。
「はい。この下の層なのかも知れません。位置的に言えば」
「じゃあ、こうなる訳だ?」
俺は二枚の絵を下から掬って持って、少し宙に浮かせる。
「そうです。で、佐倉さん、もう少し、絵を上に上げて下さい。ここが佐倉家ならば
この下に、どこまで続いているかわからない真っ暗な洋館があります。入口はピアノ室」
カオルは、俺の更に上に上げたすぐ下の辺りの宙に円を描き、
左手を這わせるようにして、テーブルの上に更に大きく円を描いた。
「すごい!洋館の入り口が分かったんだ!大発見じゃん!今までは偶然に飛ばされてたんでしょ?」
「はい。今回も行きはいきなり飛ばされたってより落とされて
真っ暗で見えなくて、闇雲に壁を触ってて、どこから来たのかを探ってて、見つけたんです。
そこだけ叩いた音が違って、佐倉さんの声もしたように思って体当たりしたらピアノ室に出たんです。
えっと、さっきは、どこまで話しましたっけ? あ、ラグとベッドの話だ。
僕は、ラグが無くなってベッドに寝てて、健はどうしても困ると僕の元に助けを求めに来た。
多分、あれは小学校の高学年の頃かな。その時以外は、ソファーの部屋にも呼ばれなくなってました」
絵をテーブルに置きつつ、俺は再びソファーに座る。
カオルは一人がけに座ってるんだけど、健の心の中のソファーは俺が座ってる3人がけくらいある筈。
ちょっと疑問に思って、カオルじゃ答えられないだろうけど、訊くことにした。
「ね、どうして、そのソファーって大きそうなのに一人しか座れないの?」
「ど、どうして・・・か。・・・・・・確かにそう聞かれたら、不思議ですね。
座れるなあ、大きさから言ったら、多分。どうして座ってなかったんだろう」
思考を纏めたいからなのか、カオルはベッドやソファーの周りに小物を描き足してた。
画力があるからなのか、奥行きとかまで描いて行く。お~センスのいい部屋だ。
「ねね、これってステンドグラス?」
「あ、はい、そうです。イスラムのモザイク風でママのお気に入りのあれは何だったんだろう。
何かについていた蓋?でも、壊れちゃったんです。ママが大切にしてたのに落ちて。
そこはベッドの部屋との出入り口です」
「え、こんな小さかったら通れないじゃん」
「通れますよ、僕達、肉体じゃないんで。ベッドの部屋から普通に扉なんですけど。
サイドにあるテーブルには、ママのキャンドルスティックと香水瓶と・・・・・・」
俺は、気がついたけど、カオルに言うのは止めようって思った。
カオルがさっきから描いてる物ーーすべて『壊れ易いもの』だった。
子供なら、綺麗で興味本位で触ってみたいと思うけど、脆くて、落としたり引っ掛けたりすれば壊れる。
これは意図して何かを象徴して置かれてる? いや、実際、あって、壊れたもの?
ちょっと待てよ、このソファーって、実在してたのか?
実在してたら色なんてころころ変わる筈ないよな、裕福じゃなかったって言ってたんだし。
あ、ヤバイ、俺まで、健の心の迷宮に巻き込まれる。
落ち着け、傍観者に徹して、情報を収集するだけに留めて、分析は後だ。
ふっと、健が拘った、高校時代は王子ルームに置いてて、
今はマンションの健の部屋にあるカウチソファーが浮かんだ。
何だろう、今のソファーはそれだろうなって、カオルはそう言ってないのに思った。
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