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”25” ネコを招待する王子 ‐7
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このクイズ形式が徒になるのに、他の家事をまったく手抜きしないから、色んなものが押してしまう。
なのに、俺は容赦なく、業務時間中、邪魔にかかる。
例えば、わざわざ遠くに夕飯の買物に連れ出してみたり、
今日のが終わってるのに、洗濯物をわざと増やしたりして。
その度に、カオルは、うっと詰まりながら、雇用主の悪行に耐え忍ぶんだ。
「ど、土日は、お休みですか?」
「ん~それは困るから、土日は割増で1.5払うんで、引き続きやって?いいでしょ。元からないもんね」
ふぇ~今日はガラス磨きもしちゃったんだな~ 凄いなあ、カオルって。
外は危ないから無理にやらないように注意しとこう。
「清掃業者、本当に断りましたからね」
「あ、今日だったっけ?ありがとう。鍵は回収してくれた?それと、窓ガラスは外ダメだよ、危ない」
「いいえ、火曜日だったんですけど。それは清掃業者が、どうしても火曜日の分は働かせろと言うので、今日やらせました」
すっとポケットに入れてたんだろう、業者用の合鍵のカードキーをくれた。
「さっすが~閃くねぇ、カオルくんは。じゃ、お疲れ様~な時間だから好きなことしてていいよ~」
「もう、お勉強に籠っちゃいますか?」
「ん~ちょっと食休みするつもり。食い過ぎたしね。何かあった?」
こくっとカオルの喉仏が動く。真摯な眼差しが俺を射る。
「少し・・・お話をしたくて。・・・あの、月曜には、那須に帰るんですよね?
佐倉さん、大学、いつから始まるんですか?・・・・・・僕だけ、帰るんですか?」
あぁ~、3日しか、誤魔化せなかったか~賢い子だもんな、カオル。
あと2日、テスト受けて。金曜の夜には、どっか、カオル好みそうな所で飯を食って。
その時も言いださなかったら、土日は思う存分、出かけて、遊び倒して。
敢えて、人混みがある場所で、日曜の夜にでも、大学を休学したことを告げようと思ってたのに。
文句言いたげに、でも毎日、家のことをして、大人しく俺のことを待ってる外見は健のカオル。
「今夜はどっかに食事に行こう」って言えば、「家政夫、舐めないで下さい」って返る。
健が拒否した、クローゼット在庫の可愛い系の服を着ちゃって、テキパキ働いて。
眼福だったなあ、もう見れなくなるのかな。
「せっかちだな~。健よりも」
「え?・・・・・・な、なんで健?」
「健なら、まだ俺の狙いなんて聞きたがらないし、訊いても来ないよ。怖がりだから」
ソファーに座って、立ち尽くすカオルを手招く。
おずおずカオルが、俺から一番離れた、L字の隅に座る、カウチソファーの着席場所。
警戒してるんだね。・・・・・・そりゃ、するか~。
「俺ね、大学、今週で行くのやめる。今さ、健って、どうなってるか知ってる?学籍」
「ガクセキって?なんですか」
「ん~大学に、この人いますよって証?この間、学生証渡したでしょう?忘れた?」
ああ、って納得してくれたみたい。中学生にもあるんだけどな、あんまり意識しないか。
大学の学生証みたいに色んなことに使わないもんな。
「健は4月9日だけしか出席していない訳だけど、5月に健として目覚めてくれた後でね。
俺が、健の身内として特例で、代理の休学願を提出した。大学側もわかってる事態だし、すぐに受け取ってくれた。
で、俺も、夏季、ん~カオルくんには1学期とか言った方が分かりやすい?までで、今後は大学を休むことにした」
「ど、どうして?なんで、佐倉さんまで、大学行かないんですか?!」
準備してたんだけど、言うとなると、この言葉は正解なのか悩む。
「健に、カオルくんを仕立てあげる為、かな」
「・・・・・・どういう、意味です、か?」
「別に、そのままの意味だよ?カオルくんを、カオルくんの意思とか、全部無視して
忘れた間の、主に学問を詰め込んで、医学部3年に復学できる程度までになったら、戻ってもらう。
俺は、そのケアも含めて、君の専門の家庭教師兼保護者になるんだ。
それを正直、自分の学業を熟しながらなんか無理だって思い知った。だから一緒に休むことにした」
呆然と、俺を見てるカオルの視線が痛い。
「ごめんね。好きな仕事探せなんて言っておきながら。こんなことにして。
でも、ちょっと遠回りになっても、これが一番いいと思う。もしも、健が・・・・・・」
「健は!健は戻って来ます!!僕が、必ず戻すって約束したじゃないですか!」
言い淀む俺の言葉に被せて、カオルが、らしくなく声を張り上げる。
「そして、カオルくんのことは、俺と、俺がアドバイスもらってる医学部の友人横山だけの秘密にする。
あ、芙柚も知ってるか。相談したから。でも、アイツだって、口外するなって言ったら絶対にしないだろうし」
言葉を失うと、ぎゅっと下唇を噛んで俯く仕草、健と一緒なんだけどな。
あんな顔になった健を追い詰めたりなんか、滅多にしなかったのにな。
「丹羽家の皆にも、言わない。いいかな、それで。
もう、俺の中では、決定事項だから、できたらお願いじゃなくて、これは要請なんだけど」
「・・・・・・はい。わかり、ました」
「もしも、これも仕事にしたいなら相応の物は保証する。君は別人を演じ続けろって強いられるのだからね」
ハイと、返事をする声が、掠れて無声音になった。
「引き受けてくれる?の?」
「強制だって言ったくせに・・・・・・」
「違うよ、要請」
「一緒です、そんなの、僕が断れないの知ってるのに。・・・・・・佐倉さん、ズルい・・・」
弱々しい声で俯いたまま、話して。
カオルは暫く黙りこむ。
「ね、カオルくん。もう一つ、俺を嫌いになる様にしてあげようか?」
言うなって、俺の中の、もう一人の自分が心中で叫ぶのに、口は勝手に動き続けた。
「俺も、カオルくんが、好きになってる。健並みに」
ばっと顔を上げ俺を見るカオルの目は、驚いて見開かれてる。
「二人が好き。二人とも選べないくらいに好き。・・・・・・そんな俺が、側に居てもいい?」
カオルと中に隠れてる健を見つめて俺は言ってた。
・・・・・・痛々しく顔が歪んで、ふっと顔を背け、カオルは、リビングを出て、寝室に行ってしまった。
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