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”27” ネコと王子の休息 ‐8
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夕食は食べて帰ろうって誘えば、絶対に起きないで寝た振りし続けるし。
マンションに帰れば、食べに出るのを嫌がり、何か作るって言い張るカオルに、
巷で評判で、一度、頼んでみたかったから付き合ってと、カレーのデリバリーで、夕食を済まそうって提案する。
「勿体無いですよ……そりゃ、僕がもうお出かけするの疲れたって言ったからだけど」
「あのさ、じゃあその勿体ない分、エッチ、シよ?ご飯作ってる時間分暇でしょ」
「その関連付け謎でしょう、そもそも。暇が出来たのでアイロンでもかけます。それとも……」
クールなカオルに戻ってしまったか~ってちょっとがっくり来てた俺を、惑った視線でちらっと見る。
「佐倉さん、お風呂入って来て下さい……よ。疲れたし、ご飯食べたら、眠りたいんです」
「りょ、了解しました~。出たら、カオルくんも入れ替わりに入っちゃうよね?お湯溜めとくね」
え、満更でもないってことだったりする?もう目は合わなくなったけど、かすかに頬を染めて頷いたよね?
入れ替わりのカオルが長めの入浴を済ませて、俺のホームウェア古着上下姿で戻った頃に、噂の美味らしいカレーが届いて。
テーブルに並べてれば、唇を尖らせて、「サラダぐらい作ったのに」ってぼやく。
ま、ちょっとお高めかも知れないけど、ちゃんと食べたかったし、外食するのと価格はそんなに変わらない。
「えっと、こっちが野菜ね。俺がシーフードっと。なんか家で食べてたの思い出す」
「佐倉さんのご実家ですか?こんな本格的な欧風だったんですね」
「あ~家は、家のコックが作ってたからさ。ちゃんとしてたよ、店で出てくるみたいな感じで。
家庭的には程遠いけど、不味いものは喰ってこなかったね。子供の頃、初めて友達の家に遊びに行ってさ、空気読めないこと言ったことあったな~」
「え、え?何て言ったんですか?」
「ん~。ご飯、どうして白いままなんですかって。バターライスやサフランライスが当たり前だと思ってたんだよね。もう、あんなのはやんないし、他の家でご馳走になる時に、違和感あっても黙って喰うのが礼儀なんだって反省したからいいんだけど。って、そんなに笑う?」
「僕も、すごく悩みましたよ佐倉さんに初めてカレー出す時。野坂さんがなんでも召し上がる方だから安心しなさいって言ってくれてたから、何も言わずに出したんですけど」
この夏、2回くらいは、カレーを作ってもらった。市販のルーだって言ってたけど、健の作ってくれてた
ホッとする、お家のカレーって感じのだったので、俺は嬉しかった。静さんもカレーって市販ルーだったって聞いて逆に驚いた。因みに、ご飯はもちろん白かった。
「凝る気になれば、深い料理なんだろうからね。そこそこ美味いね。野菜もどう?」
「美味しいです。始め甘くて、後から少しピリッとする。上品なカレーですね」
「でも、俺、佐倉家のカレー好きだよ。また、食べたいもん。作ってね」
「こんな美味しいの食べたばかりだもの暫くは嫌です。……でも嬉しい。僕の、一緒でしたか?」
空になってたグラスに水を継ぎ足してくれながら、カオルが訊く。
「僕のも、佐倉家の味になってましたか?」
「うん。なってた。ほっこりしたもん。翌日のハンバーグカレードリアがめっちゃ美味くて嬉しかった。
あ~いうジャンク風になってるのって、男子的にたまんないよ。なんだろうね、得した気分になる」
「好きそうかなって思って、やってみたんです。もしかして健にも作ってもらってました?」
「定番化してたかな。お子様だねっていっつも笑われてた」
カオルの表情がだんだん、いつも通りにリラックスして来てる。
疲れたんだろうな、時間にして、2時間ちょっとしかいなかったんだけど。
しばらく丹羽家には行かなくていいよって、後で安心させてあげよう。
「佐倉さん、明日から、どうしますか?」
「ん~あ、これ余ったの?え、もう無理?なんでよ~もう一口ぐらい食べなって。こんなに残して~」
「だって、多かったんですよ。食べてくれます?残り。食べてくれたら、デザートに桃を剥いてあげます」
帰りに夏さんに持たされた桃か。箱で贈られて来て、丹羽家で食べきれないって殆ど持たされたんだ。
カレーは、うーん、仕方ないなって3分の1は確実に残ってるのを胃に片付ける。
丁度食い終わった頃、瑞々しい白桃は、きれいな櫛形に切られ、俺の前にガラスの皿に盛られ、饗される。
中身は価格高めなカレーでも、味気ないプラ容器の空箱の側にあると、すごく美味そうに見える。
「今日明日が生食の限界かな。残りは煮てしまいます。あ、また作りましょうかフルーツグラタン」
「うん。楽しみ。あ、俺も一緒に作りたい、良い?」
カオルが、微笑んで頷く。健もそうだが、カオルも果物が好きだ。女子並みに好きだ。
カレーは残しても、桃は俺と同じ量食べるもんな。程よく冷えてて、軟らかい食感と甘みが口いっぱいに広がり、芳醇な香りが鼻に抜ける。良い桃なのが良くわかる。
カオルが機嫌良くなるのが目に見えてわかる。可愛いなあ。
「ねね、食感は硬い派?軟らかめ派」
「軟らかめですね。こっちの方が甘く感じません?」
「あ~健と逆だ。俺はどっちも好きだけど。同じ桃なんだけど、けっこうこだわる人多いんだ、家の田舎は特産品だからさ」
ふと、甘くて傷つきやすい、この果実が、健達みたいに思えた。
気質は真逆なのに、健は硬く、カオルは軟い。
俺は、どっちも好きな桃。どっちも大好きな健とカオル。
「桃も、そろそろシーズン終わりですね。秋は嬉しいな、果物が美味しくて」
「そうだね。で、さっき言いかけたの、なんだっけ?あ、そうそう、明日からどうするかってこと?」
現実に引き戻されて、カオルが表情を引き締めて俺を見つめる。
「しばらく東京でもいいか、那須に帰るか、あ、佐倉家に帰るって手もあるよ?」
「お勉強道具、那須に置いて来ちゃいましたよね?」
「あ、それは大丈夫、俺のがこっちにはあるから。明日から勉強始めちゃう?
俺は今週くらいは遊ぶつもりだったんだけどね~」
「だって、毎日、縛りが無い生活になっちゃうんですよ、二人して。
生活のリズムはある程度決めなくちゃいけないと思います。……遊びにも行きたいけど」
うわ、ちょ、ちょっと嬉しい。遊びに行きたいって言ってくれるとは思わなかった。
調子に、調子にのっちゃってもいいか、な?
「ね、お願いあるんだけどな~。きいてくれるかな~」
「なんですか?僕で出来るならいいですけど」
「くっついてお話ししたいで~す。ベッドとかでぴとっとかしちゃって。お腹もいっぱいになったことですしっ」
う、ダメか、冷徹なひと声が来るか?
「……歯磨きしないと。虫歯になりますよ。片付けたら行きますから……お先に行ってて下さい」
ゆらりと椅子から腰を上げ。器を片付けながら、耳まで真っ赤にして、答えをくれて。
カオルはそそくさとキッチンに向かってった。
「は~い。磨いて寝ておきます、です」
「……さっさと、行って下さい。見てないでっ」
食洗機に話しかけてるの?って感じなカオルは、ちょっとデレ入りなツン加減が可愛くて。
足取り軽く、歯磨きしに洗面所に向かい、シャコシャコ電動歯ブラシを当ててて、あ、シーパラ土産を開けなくちゃって思いだす。
なんで、カメのぬいぐるみ、悩んでたんだろうね?
で、選ばなかったんだけど、なんでなんだろうなって。
ちょっと切ない訳ありとも思わずに、ミント味のキスを楽しみに俺は丹念に歯を磨いてた。
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