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”30” 猫 VS ネコ -1
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side 健
「涙腺が生まれつき敏感なんだって思えばいいんだよ」
爽くんが、いつだったか、僕が泣き虫過ぎるから、直したいって泣いてる時に
優しい声で、でも、ちょっと苦笑いしてるみたいに言ってくれたのを思い出す
バカな僕、そんなこと思い出すから、ますます涙が出てきて止まらなくなる
爽くんの外套に包まれて、カオルくんの爽くんに買ってもらったんだろうカメさんを抱きしめてる
温かくて、幸せな、ほろ苦く切ない気分になるんだ
カオルくんの無茶のせいで、ソファーの部屋が脆くなっちゃったから
風穴の空いた佐倉家もが弱くなってしまって、僕がいたら本当に壊れそうで
だから僕は、佐倉家の方が居心地はいいのだけれど居られなくて
佐倉家も込みで、塞いでくるしかなかった
仕方なく暗い城の中を、少しでも温かそうな場所を探して歩いてる
カオルくんの大切なカメさんまで持ってくるつもりはなかったんだけど
触れたら崩れないどころか、抱きしめた弾力まで感じられる強さに
つい、嬉しくなって、気がついたら抱きしめたまま来てしまった
出来そこないの部屋は、空っぽばかりで、温まれそうなものはないなァ
そもそも、僕が作る部屋は、僕が嫌なこと、怖いこと、悲しいこと、痛いこと……
我慢できない辛いことがなければできないお部屋だから、温かいものがあるはずないんだけど
こんなことなら、「静さん」のお部屋を開けておけばよかったのかな
でも、あそこも辛い気分にはなるんだよね
お祖母ちゃんの必死な思いが、満ちていて、申し訳なくて、辛くなるんだ
パラパララ……
ん?
バラバラバラ……
え?
ガッ、ガッ、ガッターン!
僕はびっくりして腰を抜かして座りこむ
前に進むつもりのお城の床に、天井が抜け落ちて来た
かなり、大きな穴が開いて、真っ暗なお城に強い光が差し込む
僕は眩しくて、カメさんを抱えていない手を翳し、光から顔を背けた
次は、ドーンと突き上げるような、地震が起きて
また、何処かで、何かが壊れてる音がしてる
え?え?な、何が、何が起きてるの?
僕のお城に、な、なにが?
目の前には進めないから、元来た道を、四つん這いで進む
到る所から、強い光が差し込んで
ああ、たくさん天使の梯子が、かかってるみたいな感じになってて
闇に慣れた目には刺さるように痛いけど、見え方が変わるんだ
ああ、僕のお城って、意外と、華奢だった
だって、石造りの冷たい部屋だった筈なのに
抜けた壁から覗いてるのは、薄いベニヤ板なんだもん
映画とかの簡易セットみたいな、ね
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