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転機 1
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それは突然の事だった。
「おい! 危ねぇだろーが、押すなっつってんだろ!」
「ご、ごめん。でもダメだよ勝手に入っちゃ」
何だ?
子ども……か?
今まで一度もあの男以外が入ってきたことはない。
隠れる場所はないが、一応岩の裏に移動した。
「ねぇ、ここって何なのかな? あ! 大きい水槽があるよ」
「何だこれ? 何も入ってねえじゃねぇか」
金色の髪にくりくりした目の男の子が走って近づいてきた。
さらさらのストレートの髪がふわふわと揺れる。
「あっ!!」
目が合った。
これはどうするべきだろうか?
驚いた顔としばらく見つめ合う。
「え……え? もしかして……人魚?」
その子の後ろから「は? 人魚がいるわけねぇだろ」と、あきれたような声が聞こえてきた。
「わぁぁ……すっごく綺麗……!」
キラキラした目で見られて居心地が悪くなってくる。
「え……本物か? 嘘だろ、何でこんなところに……」
「ねぇねぇ! こっちに来てお話ししようよ」
お話し?
子どもとはいえ人間と話すことはない。
ぷいっと顔を逸らす。
「あれ? 嫌なのかな?」
「おい! あんまり近づくなよ、危ないだろ」
今までより大きい声にびっくりして肩が跳ねた。
それを咎めるように金髪の男の子が唇に指を当てて「しーっ! 静にしなきゃ人魚さんがびっくりしちゃうよ」と、もう一人の男の子に怒っていた。
「人魚さん、ちょっとだけお話ししよー?」
こっちが無視していても、何度も「ねぇねぇ」と話しかけてくる。
最初部屋に入ってきたときはビクビクしていたのに子どもというのは好奇心旺盛なのか、今はそんな様子は感じられなかった。
もう一人の男の子は俺の様子をうかがうように、少し離れたところから俺を睨んでいた。
そんなに警戒しなくても何もしない。
なんせ俺は水槽の中だ。
俺は二人に背を向けて上へと泳いでいき、水面に浮かぶ。
しかし、何故ここに来られたんだ?
あの男の目を盗んで忍び込んだのだろうか。
好奇心旺盛な子どものことだ、探険でもしていて迷い込んだのか。
「人魚さーん! また会いにくるからー」
「おい、あんまり大きい声出すなよ。早く行くぞ」
下を見ると、金髪の男の子がブンブンと大きく手を振っている。
その様子をチラッとだけ見て、すぐに目をそらした。
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