アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
言えないコトバ③ 那雪side
-
「……桜?…どう、した…」
桜は俺の手が触れた瞬間、小さく悲鳴を上げて俺の手を振り払った。
……やはり、親殺しの人間が触れてはいけなかったのだろう…と項垂れてしまう。
「ごめん…桜、もう触れないから」
涙が溢れそうになるのを堪え、無理矢理笑顔を作る。
桜が言いたそうな顔をしていたが、俺は耐えきれず逃げ出した。
これ以上否定されるのが…桜が、俺を嫌いになるのが恐くてどうしょうもなかった。
「那雪!」
「ーーーッ…!」
遠くで俺を呼ぶ声が聞こえる。
でも、振り替えれなかった…振り替えれば、認めてしまうから。
俺と桜の関係が、終わってしまう事が。
*****
「みぃ~つけた」
「ぁ痛ッ…!!」
屋上で一人でいる所にアキが後ろから蹴りを入れる。
アキはイライラを一切隠さずに、懐から煙草を取り出す。
そして、床に転がる俺を踏み潰しながらライターに火をつけた。
「逃げるなよ、男だろ馬鹿が」
「…ッ……俺は…」
恐いんだ、と言葉を紡ぐ前にアキは懐から白い紙切れを取り出した。
まったく似た者同士め…とアキは呟きながら俺にその紙を渡す。
「……ッ…!!」
紙切れの上には、愛おしい恋人の描いた文字が震えながら描いてあって。
一文字一文字読むたびに、愛おしさが込み上げた。
アキの踏みつけられている足を退かし、ありがとうと伝えてから病室に向かって走る。
早く、会いたくて。伝えたくて。この…狂おしい程の想いを。
「…桜ッ……!!」
ドアを乱暴に開け放ち、桜を見つめる。
初めて会ったあの日と同じように、やっぱり桜は綺麗だった。
「桜…俺逃げないから、話をしよう…」
桜の手を取る。
ビクッ…と震えた桜の手ごと、身体ごと抱き締めて、俺は…話始めた。
俺自身の、話を。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
72 / 203