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四話
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……おかしい。
ここは、あの塔の最上階だ。レースのカーテンの隙間からは星が見えるし、ランプに蛾が集っている。つまり深夜だ。
なのに、階段を登ってくる足音で目が覚めた。あいにく俺は睡眠が浅いほうで、そもそも職業柄、なるべく警戒を怠らないようにしているし。
念のため枕元に置いていたダガーを握っておく。音が近づいてくる。……? 軽い足音だ。子供のもの……と、いうことは。
ゆっくりとドアが開く。その隙間から見えたのは、確かに小さな手だった。眼鏡をかけていないから多少ぼやけているが、間違いないだろう。もしかしなくても、アルフレートか?
こちらに近付いてくる。目を閉じて、寝たふりをする。呼吸を浅く、一定間隔にして……。足音を立てず、息を殺しながら近付いてきたアルフレートは、俺の顔を覗き込んだ後、息を飲んだ。
「……マリウス。寝てるよな」
はい寝てますよ。寝てますとも。何がしたいのかわからねえけど、少し様子を伺うことにした。
机の椅子を持ってきて、枕元に置き、そこに座った……の、だろう。気配だけだが、まあだいたいのことは分かる。……視線を感じる。俺の髪に触れようとして、けれど寸前で手を引っ込めた。何がしたいんだ?
しばらくして、「よし」という小さな声が聞こえた。何がよしなのか、と考えていると、俺の肩に手が伸びてくる。……そのまま毛布を捲ろうとしたところで、その手を掴んだ。
「……何の御用で」
なるべく低い声で呟く。びくっと手を引っ込めようとしたが許さず、手首を掴んだまま上体を起こした。冷や汗を浮かべるアルフレートを、じとっとした目で見る。
「起きてたのかっ」
「そりゃ起きるわ。……で、何の用」
ぼりぼりと片手で頭を掻いて、ダガーを枕元に放り投げる。まったく……そもそもバレないわけがあるかよ。
本物の子供なら、眠れないーとかで来るかもしれねえけど……いや、それにしたっておかしいけどな。メイドにでも寝かしつけてもらえって話だ。
「……何も言わずに、じっとしていてくれないか」
「ムリ。教えろよ、何かあるんだろ? 俺にとっても有益な情報かも知れねえし」
掴んだままだった手を離して、ベッドのふちに座り直す。情報は多くても損がない。取捨選択がちょっとめんどくさくなるだけだ。
「確実に、引くと思うよ……」
「引かねーな。俺様が何年生きてると思ってんだよ」
百年とちょっと……いや、もっとか? そのくらい生きてきてんだ。並大抵のことじゃ驚かない自信がある。
その答えに安心したらしい。アルフレートは頬を緩ませて、ちょっともじもじしながら、ゆっくりと話しはじめた。
「じ、実は……その。呪いをかけられてから、夜中になると、無性にヤりたくなって……」
……んっ?
「……聞き間違えたかも。もっかい言え」
「だ、だから、その、……夜になると、セックスしたくて、どうしようもなくなるんだっ」
……は。
「はあぁああッ!?」
だからって、なんで? そこらの娼婦でも買えばいいだろ? 金はあるんだろ? え? マジで何がしたいのかわからない。
「は、はあ……。で、なんで俺の部屋に……」
「その……私は……」
もごもごと言いにくそうに間を置いて、口を開く。
「……男が、好きなんだ」
……へ、へぇえー……ふぅん、あっそ……。……い、いやいやいや、悪い冗談はよせ。おかしい。俺はノーマルだぞ、ノンケだぞ!? しかも外見ガキ相手だ、抱けるはずねえだろ! こ、こんなことってアリか! そんなんでいいのか、マジでっ!
「本当に、本っ当に申し訳ないんだけど、相手を……してくれないかっ」
うっわぁ、目がマジだ! 断る暇もなく、ベッドの上にあがってくる。
「いや、普通に考えて、ダメだろ! おい、聞いてんのかっ」
ずりずりと後ずさって逃げるが、すぐに背中が壁に当たった。中身が大人だろうが子供相手なんだから、手を捻り上げてやればいいんだが、こいつは依頼主なわけだし傷つけるわけにはいかない。なるべく優しめに腕を掴んで退けようとするが、そんな程度でやめてくれるわけもなく……。
呼吸を荒くしながら、アルフレートがズボンの前をくつろげる。下着の中から取り出したるはそれはまあご立派な、……えっ……? お、俺のよりでかい……というか、子供のモノじゃ、ない……よな。これ。ど、どういう事……。
「……大丈夫、痛くしないからっ」
えっ。
……えっ?
切羽詰まった様子で覆い被さってくる。あれ、おかしいな。俺の知識と現実が一致してねえ。こういう時ってだいたい、俺が逆レイプ的なあれで突っ込む側だろ? けどこいつ今、痛くしないって言ったな。あれっ……おかしい……これは……もしかして。
……貞操の危機だ!!
「待て待て待て! 俺様はなあ、ノーマルなんだよ、ノンケなんだよぉっ! フツーに女の子が好きなの!」
「なんなら報酬弾んでおくからっ!!」
「嫌だぁっ!!」
駄々捏ねんじゃねえっ! つうか、金で買収しようとするのやめてくれないかな! 決心が揺らぐ!
それでも傷つけちまったら、契約終了の可能性すらある……だがここまできたら、抵抗しないわけにはいかねえだろ、こんなの! 頭を押しのけてやるが、それでも退かない。逆に俺の手をはらって懐に入り込み、膝の上に座られた。ああくそちょこまかと! ……腹にモノが当たる。うわぁ……。
「……仕方ないな……」
アルフレートが少し落胆しながら、ため息をついた。よかった諦めた……と思ったのも束の間、突然間合いを詰めてきた。対応する隙も与えず、俺の口の中に何かを放り込む。慌てて吐き出そうとしたが口を押さえられた。引き剥がそうとした瞬間、気付く。……甘い。味と感触的に、糖衣だろう……が、あっという間に溶けて、中から液体が漏れてくる。……おかしい、舌が痺れる。待て、これはまさかっ……!!
「っぷはぁ!? な、なんでお前が、こんなの持ってッ……!」
口を覆っていた手が離れたのと同時に、掴みかかる。これは、対魔術師用の兵器だ……!!
魔術師というのは、マナと通称される流れ、即ち一般的に言う「気」を読み取り、その力に乗せて魔力を放出して、術を行使する。
その性質ゆえに、本人の持つ魔力性質と真逆のマナを投与すると、血液中のマナの流れを狂わせて、まともな魔法が使えなくなってしまうわけで。
その上、俺たちエルフ族っつーのはそういう「流れ」に依存する形で、生命を維持している。人間なら多少弄られても問題はない……が、俺たちの場合は……っ!!
「やっぱり、君にも効くんだね……」
「っ、そーだよっ、腐ってもエルフ、だからなぁ……っ」
力が、入らねえ。……マナの動きを阻害されると、どうなるか。この通りだ。筋肉が弛緩しちまって、力が入りにくくなる。「エルフを慰み者にするならこれに限る」という通説を、こいつも知っていたのだろう。だが、アマチュアがこんな高度なもの、作れるはずがない。そもそも同業者でなけりゃ、魔力の性質は見抜けなかったはずだ。なのにどうして、こいつは……。
アルフレートの手で、寝間着の前が開けられていく。本気かよ……どうにかしてるぞ、お前。
「耳、下がってるよ」
「っん、……さわんなっ!」
ああもうっ変な声出たっ! 耳はやめろ、耳はっ! そこは敏感なんだよ、そのくらい知ってるだろ!
そっぽを向いて押し退けようとしたがびくともしない。それどころか、腕を持ち上げるだけで精一杯だ。くっそ、とんでもない物を持ち込みやがって……!
「ッぅあん!?」
急に、耳の先を舐められた。びくんと肩が跳ねる。う、うわ。待って、それは……ほんとに、ダメ……!
「ははっ……なに? 今の声」
笑い事じゃねえ……。今ので味を占めたらしい。また、ちろりと舌で舐められる。み、耳なんて、隠しようがねえし守りようもねえとこを、そんな。
「っひ、やめ、それはぁっ……っんぅ……っ!?」
そのまま抵抗できずにいると、今度は口に含まれて、舐めしゃぶられた。くっそ、これ、まるでフェラされてるような、嫌な感覚だ……。かぷかぷ甘噛みしてくるのが、なんかもう、つーか神経集中してんだから、せめて優しくッ! そもそも触んな!
口の中に指を突っ込まれる。短い指が口の中を探るように動いて、唾液を絡めとって。何がしたいんだこいつ、と思ってる間に、真意に気がついた。……アルフレートが立ち上がる。目の前には……口の位置とソレの位置が、ほぼジャストなわけで、それはつまり。
「噛みついたら、減給だからね」
あきらかに目の色が変わっちゃってる彼は、そんなむごいことを言いながら、俺の唇に、己の欲望の先を擦り付けてきた。さすがにシモの世話はサービス外だろうが!? ちくしょう、こいつがガキじゃなかったら、絶対今ここで殴っ……れないんだった! 拳を握るが、卵すら割れないくらいの握力しかない。
もちろんそれは顎や舌だって同じで、喋ることはできるが、食いちぎれるほどの力もなく……。指を突っ込まれ、口をこじ開けられてしまうと、これはもう、覚悟を決めるしか。
「んぐっ!?」
……喉奥まで、一気に貫かれた。やっぱこれ、ガキのサイズじゃないっ!! 雄の臭いがするっ、人間臭いッ! 久々だな、この人間臭いとかいう感覚! ン十年ぶりだ……。頭を掴まれ、無理やりに喉を犯される。唸り声すらうまくあげられない。
「んぅっ、あっ……、すごい、ぬめぬめだ……」
こっちは噛まないようにする事に必死になってるっていうのに、うっとりとそんな事を呟きながら容赦なく腰を振って、喉奥を突きまくる。さっきからだいぶえずいているが、そんな事も気にならないらしい。
「ぅぶっ、ぐ、ぅ、……ッッ!?」
手のひらでアルフレートの腰を押すが、そのくらいで退いてくれるわけもない。僅かに感じる塩気は確実に先走りなわけで、舌の上を滑っていくのは男のそれなわけで。にゅぷにゅぷと音がする。もうだいぶ涙目だ……。自然に呼吸が浅く、というか、どんどん奥を突かれるのが早くなってきて、呼吸ができなくなってきた。もしかしなくてもこれ、イくんだろうな……。
「ねえマリウスっ、全部、ぜんぶ飲んでねっ! 濃いぃのあげるからぁっ!」
上擦った声で、アルフレートがそんな、どこぞの風俗かみたいな事をのたまう。睨み付けるがここからじゃ上目遣いにしかならない。く、くっそ、お前あとで、覚えて……っ!
「ッ、んぅっ、……!」
どくんと脈打ったソレが、喉の奥に精液を注ぎこみはじめる。とっさに呼吸を止めて飲み込まないようにしたが、生温くてどろりとしたものが絡みついてきて、気持ちが悪りぃ……。
馬鹿みたいに長い射精のあと、ぶるりと震えてから、突っ込んでいたものを抜く。それを確認してから、口の中に溜まっていた精液を手のひらに吐き出した。うっわ……尋常じゃねえくらい多い……。
「……っ、……マリウス。飲んでって、言ったよね?」
つまらなそうな声が、頭上から聞こえてくる。言われたが従うなんて一言も言ってねえし、一方的に言われたんだから従う理由もねえっ。
「俺の口はこういう事に使うためにあるわけじゃねえのっ」
手の届く場所にあったタオルを取って、手のひらを拭う。多少、体の自由が利くようになってきた。つっても、さっきよりしっかり動くだけだが。何が楽しくて、オスのちんぽ咥えこまされた挙句に、精液まで飲まなきゃいけないんだっつの。これをおっさんにやられてたら、俺、実家帰ってたかも……。
「……じゃあ、おしおきだっ」
むすっとした顔で俺の寝間着の襟を掴む。そのまま斜め手前に引かれて、ベッドの上に横になるような形で倒れた。ズボンにまで手をかけようとしたので抵抗したが、下着ともどもあっけなく脱がされる。お、おしおきって、何だよ!? ……もしかして、その、やるのか? 一線越えちまうのか!? 上になっている左足を持ち上げて曲げさせて、右足のふとももの上に乗る。う、うわ、これ女にやるやつだよ、駄目だってそういうの! なあ!
「こっちも、緩んでるでしょ」
あらぬところを指先でくりくりと擦りながら、恐ろしい事を言う。……もはやなりふり構ってられない状況だ。仕方ねえ……ちょっと媚びるか。
「な……なあ、俺、……初めて、なんだけど……っ」
なるべく甘ぁい声で言ったつもりだが、かなり上擦っていたと思う。事実だ、なにも恥じることはない! けどアルフレートは分かってるとでも言いたげな顔で、懐から小瓶を取り出した。栓を開けると、ほのかに甘くていい香りがする。香油か、それ。準備してきてたのかよ……。
「使って大丈夫なやつなのか、それ……」
「あとでお腹下すかも」
「はあっ!?」
笑い混じりで言うセリフじゃねえぞ、シャレになんねえ! 指に香油を垂らすそれが嫌に楽しそうに見えた。変な体勢のせいで、抵抗ができない。
ぬぷん、と指が中に進入してきた。へ、変な感じする。細いし痛くはない……けど。抜き差しされるたびに体がビクつく。ぶわりと肌が粟立った。勝手に指を増やされて、動かされて。背筋がぞくぞくして……感覚が、おかしい。なんで俺、こんなに興奮して……っ。
枕を掴んで抱き、顔を埋める。フーフー短い呼吸を繰り返し息を整えようとするが、うまくいかない。気付いたら指が抜かれていて、そこに、凶器にも似たあれがあてがわれていた。
「……挿れるけど、いいよね?」
「よくなっ、……ぁあっ、ぁ……!」
刺激に対して、身体が、嬌声という確かな形で反応を返す。ああ、これ、気持ちいいのか。……なんでだ!? あの薬にはそんな効果はないぞ!?
抵抗できないうちに、奥の奥まで、彼の欲望にみっちりと満たされてしまった。息が止まっているのに気付いたのは、それでもまだ奥に侵入しようとしてきた事で呻いたから。がちがち音を立てるだけで歯の根が合わない。どうやらアルフレートのモノは、俺の中が狭苦しく感じるらしい。本来ならこんなふうに使われるはずのない所をこじ開けといて、まだどうにかしようっていうのか……。
「……ははっ。……うん。初物だよね、やっぱり」
なぁにが、やっぱりだ……っ! 唇を噛みながら、横目で睨み付ける。だがそもそも目を合わせてこないからあまり意味がない。ずるりと半ばまで引きずり出すと、また奥まで腰を打ち付けられ、呻き声が洩れた。苦しい。
「んぉっ!? う、あぁッ、待っ、……あ、ひぅ、ううぅっ!?」
容赦のない律動が始まる。な、なんて声出してんだ、俺はっ!? 慌てて口を押さえたが、遅いのは分かってる。かあっと顔が赤くなる。恐る恐る、アルフレートを見ると……嬉しそうな、きらきらした笑顔になってらっしゃるわけで。
「奥がいいの? 初めてなのにっ、こうされるのが……イイんだっ!?」
「ぅあっ、ん、んぅっ!」
ごりゅん、なんていいそうなくらい強く突き上げられた。ありえないものが、入っちゃいけないとこまで入ってる気がする。頭が、回らなくなってきた。拳を握ると爪が手のひらに食い込む。……少し、握力が戻ってきてる。でも、抵抗する気になれない。それどころか、……ちょっと、気持ちいい……っ!?
「ぅ、ぐ、……っなんかしただろっ、この、クソガキっ……!」
「いや、本当にあれ以外は何もしてないけど……ふつうにおじさんだし」
「そういうことじゃねぇえ……っ」
俺から見りゃあ実年齢だろうがガキだっつーの!! ……つーことは、これ……素質っつうことに、なっちまうのか!? うわぁ嫌だ! こんな事されて喜ぶなんてただのマゾじゃ……っ!
「ほら。君のおちんちんは、お尻ほじられるのが気持ちいいって、分かってるんだよ? 涎だらだら垂らしちゃってさぁ……」
「ひぅっ、あ、ぁあっ、触んなぁっ」
なんで勃ってんだよ、俺は!? 細い指で先を抉られて、手のひら全体を使って扱かれると、してはならない事をさせている気分でいっぱいになる。だがそもそも、してはならない事をされてるのはこっちの方で、俺は純粋な被害者だ……。情けなさからか、ほろっと涙が溢れた。こんな時なのに、「これ採取しとけば後で便利なのに」とかいう貧乏性な思考が割り込んできた。エルフの涙なあ……そういや試してねえな……いや、そんな事考えてる場合じゃ、ない。
「は、あっ、……ん、んんっ!」
甘い声で喘いで、必死に腰を打ち付けて。同じ男なんだから、わかる。イきそうなんだ。けど、自分本位に動くと、女っつーものは物足りなくなって……。
「……なぁっ、……もっとっ、もっと奥っ、おくぅ……っ!」
みっともない姿を、アルフレートの前に晒している。分かってる。けれど、身体が言う事を聞かなかった。
よくわからないうちに強請って、彼の服の裾を掴みぼろぼろ泣きながら、快楽を迎え入れた。
……目が覚めた。しばらくぼんやりと瞬きを繰り返してから、きしむ体に鞭打って、上半身を起こす。……ひどく、喉が渇いている。水差しを手に取ろうとして手を伸ばして、そこで固まった。……隣で、アルフレートが眠っている。
まぁ、きれーな顔ですやすやと……。こうして見るとほんとガキにしか見えねえのになあ。俺じゃなかったら、今ここで殺されてるかもしれないっつーのに、平和なこった。……毛布をそっと捲る。……ああ、そう。平常時はフツーのサイズなわけね。というどうでもよい事を確認してから、それを見なかった事にした。
いっそ蹴落としてやろうかとも思ったが、そんな事をする気力も、体力もない。あと、度胸もない。
……問い詰めるのは明日にしよう。水飲んで、もう一眠りするか……。
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