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よろこぶこと
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目の前で、エドガーさんが目を大きく瞬かせた。
「申し訳ありません、セシル殿……もう一度、仰っていただけますか?」
「れ、レオさんが喜ぶものって何ですか?」
「…………」
今、レオさんは狩りに出ていて、珍しくエドガーさんがレオさんについて行かなかったから、丁度いいと思ってぼくはエドガーさんに声をかけた。
「何かございましたか?」
「何もないです。だけど、ぼくには助けてもらったご恩があります。僕は一度にその恩を全て返す能力なんてないから、少しずつ、沢山の恩返しがしたくて。だから、まずは一つ目です」
そう言うと、エドガーさんはふわりと頬を緩めて、優しく微笑んでくれた。
「セシル殿は、本当に……つい数日前まで貧民街にいたとは思えない潔白さをお持ちですね」
イヴ殿の高潔さとはまた別の──脆くて美しい白さです。
「……?」
「何でもございません。レオ王子の喜ぶもの、でしたね。……レオ王子は、基本的に物欲がございません。何か喜ばせたいというのなら、行動の方がよろしいでしょうね」
「行動……」
「レオ王子は幼い頃、女王陛下──つまり、母上様によく膝枕をねだっておりました」
膝枕…
人肌が恋しいのかな? やっぱりレオさんは寂しがり屋なのかもしれない。
「──おや、噂をすればなんとやら、レオ王子がお帰りになったようです」
言われて、エドガーさんに倣って窓を覗こうとしたけど、身長が足りなかった。
一生懸命背伸びしたり跳んでみたりしたけど駄目で、そうしていたら見かねたエドガーさんがぼくを持ち上げてくれた。
窓の外に、五、六人の大きな男の人と、その中じゃ小さく見えて、でも一番目立つ蜂蜜みたいな髪。
「レオさん!」
「まずはお迎えに行きましょうか、きっとレオ王子もお喜びになりますよ」
ニコリと微笑んで手を差し伸べてくれたエドガーさんに「はい!」と返事をして、手を繋いでエントランスに向かった。
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