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#81
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笹本的にはこのまま抱いてもかまわなかった。
むしろそうしたい気持ちの方が強い。
だが、この恋愛初心者の様な秀美な男に手を出せば、
確実に自分を止められない事は分かっていた。
そしてそれが神城に苦痛を与えてしまうであろう事も。
「…夕食を作ろうか」
「…え、いいんですか?」
「うん?それは…そういう意味で言ってる?」
「え…あ…はい…。だって…ずっと待ってもらってたから…その…」
「そんなに急がなくていいよ。少しずつ進んで行こう。今は…真日がそういう気持ちになってくれただけで十分だよ。それに、こういう事には色々と準備が必要だから…」
それが何を示しているのか、
神城にも分からないわけではない。
さっきとは別の意味で顔に熱がこもる。
「そ、そうですよね。じゃあ、あの、夕食…作りましょうか!」
「そうだね。でも何を作ろうか。結局何の食材も買ってきてないんだ。冷蔵庫に何か入ってる?」
「どうかな…ちょっと見てみます。」
神城がソファーから立ち上がり、
キッチンに向かった。
冷蔵庫の中を思い浮かべるが、
これと言って料理になりそうな食材が入っていた気はしない。
そして冷蔵庫を開けてみれば、
案の定だった。
「うー…あんまりないですね。買い物行った方が早いかも知れないです。」
「そっか。じゃあ先に行こうか。今日は車で来てるから、多めに買っても大丈夫だし、大きい所に行こうか。」
「あ、本当ですか?助かります。」
先ほどまでの甘い空気とは一変して家庭的な、
現実的な雰囲気になったが、
神城も笹本もそれは悪くないと思っている。
神城が出掛ける準備をしてすぐに部屋を出た。
駐車場に止めてあった笹本の車に乗り込む。
「あれ、何気に恭介さんの車に乗るの初めてです。」
「そう?なんか乗せたことがある気がしてた。でもそうか、プライベートで会う事なんてほとんど無かったから…」
「…そうですよね。なんか不思議です。恭介さんがこうやってうちに来て、一緒に夕食の買い物に行くなんて。それに部長を名前で呼んでるのも…本当はまだ不思議です」
「…そうだね。でもそのうちそれが当たり前になるよ。」
「だと良いですね…」
「さ、出発しますよ。」
「お願いします。」
笹本が車のエンジンをかけ、
ギアをドライブに入れるとゆっくりとアクセルを踏む。
その一連の動作に迷いはない。
神城は車を運転しないので、
それがなんだか格好良く見えた。
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