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嵐に避けられている、と雛が気付いてからは辛く悲しい毎日がやけに長く感じた。
昔から誰よりも雛を甘やかしてくれた嵐。
甘えすぎて、そろそろ愛想を尽かされたのかもしれない。
嵐の告白に応えられない雛を嫌いになったのかもしれない。
だけどこのままらんちゃんに避けられたままは嫌だ。
ちゃんと目を見て話して、それでも...それでもだめだったら、実家に帰ろう。
らんちゃんをいつまでも僕に縛り付けてちゃ、だめだから。
雛がそう決意した日の夜、雛は自室で課題のレポートと格闘している嵐の背中に声をかけた。
「らんちゃん」
一回目、呼んでみても嵐の体はこちらを向かない。
2人しかいない部屋で、聞こえていないことなんてない筈なのに。
じくじくと痛む胸。
鼻の奥がつんと熱くなって、気を抜けば涙が零れ落ちてしまいそうだ。
久しぶりに、泣かないように唇をきゅうっと噛み締めた。
それから深く息を吸って、もう一度その背中に向かって声をかける。
「らんちゃん!」
また無視されたらどうしよう、と少し声が震えた。
キーボードを叩いていた音が、ゆっくりになって次第に止まる。
それから小さな溜息が聞こえて、派手な金髪が揺れた。
ゆっくりとこちらを振り返る背中。
「...なに?」
今度は、嵐がちゃんとこっちを向いてくれた。
表情は面倒くさそうに顰められているけれど、嵐の瞳が自分に向けられている。
今まで当たり前だったそれが、どんなに幸せなことだったのか痛い程思い知った。
そんなことを考え出すともうダメだった。
大介と離れてから数か月、嵐に避けられてから数週間。
抱えていた不安や悲しみがあふれ出して止まらない。
ぼろぼろと流れ落ちる涙と、痙攣しているように震える喉。
こんなの、またらんちゃんを困らせるって分かってる。
でもごめんね、1人じゃこの涙は止められないよ。
「、っ...らん、ちゃん...っ」
絞り出すようにもう一度名前を呼ぶと、さっきよりも大きな溜息が聞こえた。
「...ばか雛」
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