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6-1side雛
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嵐との繋がりになりそうな伝手は全て辿ってみたけれど、嵐に先手を打たれているのかどれも本人までは辿り着けなかった。
「ううん、ありがとう。ごめんねいきなり。…うん、それじゃあ。」
震えそうになる声で、なんとかそう言って通話を切る。
1番期待していた紫藤くんもだめか…。
たまに嵐と会うことがあるという彼の連絡先を何とか手に入れて電話してみたが、嵐へ繋がる手段は得られなかった。
誰にも頼れない。もう自分の足で探すしかない。
唇を軽く噛んで、息を大きく吸い込む。
どんな結果になっても、ちゃんと2人の納得のいく形で終わるんだ。このままなんて絶対に嫌。
幸いにも嵐の仕事は俳優業。
姿を見るだけならイベントでもテレビでもたくさんある。
引っ越してきてからほとんど使ったことないラップトップを引っ張り出して、雛は嵐の名前を検索した。驚く程にたくさんのサイトがヒットして、こくりと唾を飲み込む。
「写真もこんなにたくさん…。」
今まで無意識のうちに嵐の仕事について知るのを避けてきていたけれど、改めてすごい人になってしまったのだと思い知る。身長も、体重も誕生日も、趣味も特技もあっという間に調べる事が出来てしまった。
そして辿り着いたのは、嵐の公式SNSアカウント。SNSに疎い雛はその存在を知らなかったが、フォロワーは数十万にものぼっている。普段は彼のマネージャーが投稿していることが多いらしく、ドラマの撮影風景や映画の告知動画が上げられていた。その中で雛が目を留めたのは、嵐自身が投稿した写真だった。
「…これ。」
《やっと週末。綺麗。また来たい。撮影がんばろ。藍》
極短いテキストに添えられた写真。いつか嵐と出かけた時に2人で見たイルミネーション。都会だと何もイベントがなくてもいつもこんなに輝いているのかと、感動してはしゃいだことを覚えている。嵐はその姿を呆れたように見て小さく笑いながら、何枚か写真を撮っていた。
《また来たい。》
画面の中の文字がが少しずつぼやけていく。
僕もあの日同じことを思ったよ。
「らんちゃん、」
会いたいよ。
止まらない涙を拭っていると、ピコンという軽快な音とともに、嵐のアカウントに新しい写真が投稿された。それは何かのポスターのようで、雛はすぐに画像をクリックした。
「…トーク、ショー?」
内容もほとんど見ることなく、慌てて日程を確認すると、イベントはもう来月に迫っている。既にチケットの多くは売られてしまっていて、残っているのは先着順の一般販売のみだ。
どれだけの人が申し込んでくるのか。チケットを買ったところで、見に行ったところでどうなるというのか。
そんな迷いが僅かに浮かんだものの、雛は首を振ってそれらを振り払った。
だってもう後がない。僕は、らんちゃんに会いに行くんだ。
これしかない。
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