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嵐の両親は嵐が小学生の時に事故で他界している。
その後暫くは雛の家族と生活していたが、高校生になったのをきっかけにずっとアパートで一人暮らしをしていた。
「はい、冷めないうちに飲めよ」
「ありがと...」
嵐の部屋のソファに座ってマグカップを受け取る。
中には温かいココアが淹れられていた。
コーヒーしか飲まない嵐の部屋にココアが常備してあるのは、ココアが好きな雛の為だ。
「風呂も沸いてるから好きな時に入っていい。どうせ今日は泊まってくだろ?」
そう言って雛の隣に腰掛けた嵐に感謝の気持ちを伝える。
「...っ、ありがとう...」
「うん」
「らんちゃんがいてくれて...よかった...」
「昔からずっといるだろ」
ぐしゃぐしゃと乱暴に雛の頭を撫でる嵐。
当たり前のように雛の側にいて、支えてくれる嵐にはどれだけ感謝しても足りない。
嵐の淹れてくれたココアを飲んで、少し落ち着いた頃、雛が口を開いた。
「らんちゃん...」
「ん?」
「僕ね、ちょっと疲れちゃったみたい...」
「なんで」
「本当はね、知ってるんだよ。大介さんが目覚めるなんてことは...奇跡でも起こらないと有り得ない...」
「でもお前はずっとその奇跡を待つって決めたんだろ?」
「そう、なんだけど...もう…時間が...」
「時間?」
「お医者さんが言ってたの...植物状態でも、寿命があるんだって...このまま上手くいっても10年以上持たせるとこはできないだろうし、その前に...大介さん...っ、がんば、れなくなるかも...って」
「...」
雛の視界がどんどん滲んで、ぼやけていく。
「大介さんの、お母さんも...、もう...っ...じゅ、うぶん、がんば...たから...っ...そろそろ、おわらせ...てっ、あげよう...、て...」
「雛...」
「ぼく...っ、ど...したら...っ」
「...」
ふわりと温かい体温に包まれた雛。
「俺が...替わってあげられたらいいのにな...」
苦しそうにそう言った嵐に首を振る。
だめだよ、らんちゃんもいなくなっちゃ嫌だよ...誰も、いなくならないで...
───世界は、いつだって残酷だ。
好きな人と笑って生きていくことさえ許してくれない。
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