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再び雛が泣き止むまで付き合ってくれた嵐は、雛の涙を服の袖で拭って立ち上がった。
そしてそのまま雛の手を引き、リビングへと向かう。
ぺたぺたと歩く雛がリビングに近づくにつれて、微かに漂う食欲をそそる香り。
リビングのドアをくぐれば、ダイニングテーブルに温かそうなご飯と味噌汁が並んでいた。
その光景に驚いた雛は、繋いでいた手をぎゅっと握って目を丸くして訊ねる。
「まさか…らんちゃんが、ごはん作ったの?」
「普段は面倒だからやんないだけ。まぁ、味は保障できないけど。食べる?」
断る理由なんてある筈もない。勢いよく頷いた雛と、その反応を見て笑う嵐は仲良く食卓についた。
嵐の作った朝食は、正直想像していたより何倍も美味しかった。
それを伝えると、「当たり前だろ」と言いながらも少し照れて嵐が笑みを浮かべる。雛もその笑顔につられて小さく微笑む。
「いつの間に料理覚えたの?」
「覚えるも何もこのくらい誰でもできるだろ」
「えー、何それ。モテる男、って感じ」
「どの辺が?」
「顔!」
「なんだそれ、結局顔かよ!」
くだらないことを言い合って、目を合わせて笑う。
悲しいことばかり続く毎日の中で、少しだけ心が安らぐ時間。
今1人で過ごしていたなら、どうなっていただろう。
きっとこんな風にご飯なんて食べていないし、下手したらベッドから出てきてもないかもしれない。
悲しいことを見ないように、考えないようにして笑ってるだけかもしれないけど、1人で泣いてるよりはずっといい。
雛は目の前の幼馴染の存在の大きさを改めて感じながら、ゆっくりと朝食を食べた。
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