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自慰(士郎side)
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自分の前で臆面もなく自らを慰める男に、唖然とした。
手が止まると、泡だらけの頭をこちらの胸に擦りつけるようにして、続きをうながしてくる。
「…っ、は…ぁ…」
こぼれ落ちる吐息と、抑えた喘ぎ声の壮絶な色っぽさに、目眩がした。
長い指先が大きなストライドを描くたびに、クチュクチュと濡れた音が響く。
ペロリと己の唇を舐める紅い舌や、仰け反る男らしい喉元が、鏡越しにこちらの視線を釘付けにしてくれる。
見てはいけないと思うのに、目を逸せない。
高まっていく吐息の色っぽさに、指の動きはどうしたって、ぎごちなくなる。
「く…っ」
わずかに眉を寄せて、薄く開いた目で虚空を見据え、限界に向かって自分を追い詰めていく姿を、綺麗だと思った。
そんな自分が許せなくて、指先に力を込めると、龍之介がフッと笑った。
途端に跳ね上がる鼓動に、怖くなった。
どこまで行っても、この男の手の中からは逃れられない恐怖。
苦手で目の前から消えてほしいのに、目が離せなくてイライラした。
「ん…っ、ヤベェ……な。そろそろイク…っ、く…っ」
龍之介の身体がビクビクッと震えたかと思うと、力強い放物線を描き、鏡や浴室の壁に大量の白濁が飛び散った。
「は…ぁ……」
限界まで反った背中から、一気に力が抜けていく。
指先に残った己の白濁を舐め取った龍之介が、
「……スゲェ出た」
苦笑して、白濁をシャワーで流し終えると、再び大人しく目を閉じた。
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