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ざわめき(士郎side)
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「ん……」
意識がやけにゆっくり浮上した。
いつもなら予定時刻より早めに目を覚まし、アラームの音さえめったに聞くことはないのだが、この日はおかしなほど身体が重かった。
一瞬、風邪でも引いたかと思ったが、身体を貫く痛みに、一気に意識が覚醒した。
同時に昨夜の出来事の一部始終を思い出し、怒りと屈辱にシーツを握りしめる。
とにかく全身をくまなく洗わなければ気が済まないと、身体を起こそうとしたが、起き上がることはおろか、身体を起こすことさえできない自分に、唖然とした。
ズキン、ズキン、と中心部からせり上がってくる痛みも、尋常ではなかった。
まさか裂けているんじゃないだろうなと、冷や汗が伝う。
ほとんど記憶はなかったが、夜中、意識が浮上するたびに、途方もない痛みと快楽の狭間で、もはや自分のものではないかのような身体が身悶えていた。
口移しで水を飲まされ、額の汗を拭われ、真新しいシーツに組み敷かれては、延々と抱かれ続けた。
もはや何度イッて何度奥に出されたのかすらわからない。
「……!」
はたと自らの身体に触れた。
サラサラのTシャツに、ボクサーパンツ。
極めつけの真新しいシーツ。
この様子では確実に中も洗われている。
本当にあの男はよけいなことばかりすると、ギリッと奥歯を噛みしめた。
不意に枕元のスマートフォンが点滅しているのに気づき、軋む身体に鞭打ちながら、手に取った。
『ヤボ用で、先に出る。カラダはキツイだろうが、切れちゃいねェから心配すンな。飯は届けさせる。今日はゆっくり寝とけ。約束は守る。龍之介』
伝達事項や気遣いの言葉が簡潔に記されている一方で、昨夜の感想めいた言葉だけがきれいさっぱり抜け落ちていた。
書かれたら書かれたで虫酸が走るのだろうが、何も言われないとこれまた期待外れだったとでも言われているようで腹が立つ。
怪我の一件といい、いったいどこまで人を振り回せば気が済むのかと怒りが込み上げてきたが、当の相手がいないのでは虚しいだけだ。
唯一の救いは、約束は守ると書かれた一文だった。
規格外で欠陥だらけな男だが、一度口にしたことは必ず守る。
その点だけは信用できる。
だから嫌々ながらも、長年克己を託してきた。
自分の予測が正しければ、今日のトレジャーハントで克己と達也の距離は縮まり、微笑ましいカップル誕生となるだろう。
これで本当に10年越しの初恋にピリオドが打たれるわけだ。
思っていたよりダメージが少ないのは、先のダメージの上塗りのせいだろう。
いいようにしてやられたのは腹が立つが、出すものを出し尽くしたせいでどこかスッキリしているのもまた確かで、常に自分の周りを覆っていた行き場のない厚い雲が晴れたように感じられた。
自分もまた克己のように、誰かを本気で好きになれるのだろうか。
不意に一晩中、自分を苛み続けた、闇の底から響く甘い毒のような声が蘇る。
なぜ今アイツを思い出す……?
胸の辺りがざわめいて、慌てて首を振った。
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