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不穏な気配(龍之介side)
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視界を緑の景色が高速で流れていく。
迷彩服に身を包むと、身が引き締まるのと同時に解き放たれ、どこまでも自由に飛べる気がした。
戦いを強いられているとは思わない。
人とは違う刺激だらけの幼少期を送ったせいだろうか。
もとより平凡なだけの日常では物足さを覚えてしまう。
世の中にはギリギリの緊張感の中でしか生きられない種類の人間がいるが、間違いなく自分もその内の一人なのだろう。
久々の単独行動に、心配する仲間には悪いが心が踊った。
チーム戦も楽しいが、つきまとう諸々が時に煩わしくも感じられた。
仲間は大事だが、すべてを削ぎ落として独りで立つ時間もまた自己を形成する重要なパーツの一つとなる。
朝から森の中を大分駆けた。
休憩がてら川の水を飲み、ボトルに補充する。
空を見上げれば、雲行きの怪しさが気になった。
空気も幾分、重たい気がした。
不穏な気配。
何かが起こりそうな予感がする。
束の間、木に寄りかかり、目を閉じた。
目は休めても、耳を澄まし、周囲の気配に絶えず気を配っている。
複数で行動する際は仲間を信じ、スイッチを完全にオフにすることもないわけではなかったが、単独行動の時は身体の各パーツを別々に休めてやる必要があった。
物心ついた時にはすでにそうやって生きていた。
もはや呼吸するのと大差ない。
敵から見つかり難い以上に、退路を確保できることが、休憩場所を選ぶ場合の最優先事項となる。
腕のいい狙撃手に数キロ先から狙われたら、その時はあきらめる他なかったが、自陣内部であり、周囲を隠れた仲間が警戒してくれていることを思えばそのリスクは最小限であり、ほぼ除外できると考えていい。
いろいろと考えておくことはあるはずなのに、気づけば脳裏を士郎の裸体やキツく熱い眼差しが支配している。
マコトのことをどうこう言えやしない。
今回は相当にイカれている自覚があった。
骨のある相手だと以前から思ってはいたが、手を出してみたら思っていた以上に強気で、崩れず、身体の相性も最高だった。
再びあの身体を手に入れるためなら、何でもしてしまいそうな自分がいる。
「……!?」
不意に周囲の空気がざわめいた気がした。
肌が泡立つ。
声が聞こえるほどの距離ではなく、殺気というには弱いが、戦いの気配がした。
生徒会役員にのみ許されたスマートフォンで執務室のハルトとやり取りをし、とある生徒の座標を確かめると、気配のする方向と合致した。
士郎がアイツなら大丈夫だと断言したその理由が知りたかった。
長年気まぐれにエサをやってきた仔猫程度には愛着のある子供の、幸せの行方が気にかかる。
ずいぶんとほだされたものだと己に呆れながら立ち上がり、身軽さを優先した最低限の荷物を背負うと、息が切れない程度の速度で駆け出した。
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