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応急手当(龍之介side)
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ユージンだと気づいた瞬間、目を見開いたルイだったが、まずは腹の傷をどうにかすべきだと気づいたようだ。
「どけ」
傷を押さえていた自分を下がらせて、登山バッグから取り出した消毒薬を乱暴に傷口に撒いた。
「く…はっ」
「コイツ、助けるんでいいんだよな?」
「おう」
とりあえずの処置だと、止血専用の綿を傷口に詰めて、清潔なガーゼを当てて固定する。
「あっ、リューもケガしてるじゃん!」
マコトが叫んで、ルイの腕を引く。
「そんなヤツどーでもいーから、リューを診ろよ!」
「……おまえ、オレが腹を立ててないとでも思ってんのか?」
ルイのいつにも増して低い声音に場が凍った。
「リューの傷は見た目ほど大したことはない」
ルイのナイフのような視線を受けたマコトは肩をすくめると、渋々頷いた。
戦士たるもの、無意識に急所をかばう癖がついている。
腕が動くことも確認済みだ。
ということは、神経や大きな血管に損傷はないと考えてよかった。
ほら、と包帯と消毒薬をマコトに投げて寄越したルイが、アゴでしゃくって、指示を出す。
「とりあえず消毒して、止血がてら巻いてやれ。後でちゃんと縫ってやる」
「わかった!」
「リュー、鎮痛剤いるか?」
「……いらね」
「じゃ、抗生物質だけでも飲んどけ」
こちらに放ったのと同じカプセルをユージンの口にも放り込んだルイが、無理やりその口にペットボトルの水を流し込む。
「おまえはもちろん、鎮痛剤ナシな。せいぜい苦しめ」
ルイはユージンの身体を隅々まで確かめ、武器の類を没収すると、手脚を拘束した状態で背中に担ぎ上げ、ロープを使い、器用に自分の身体に固定した。
極端に面倒くさがりのルイだが、こと医療行為に関する限りは、何事も迅速かつ的確だった。
任せていいと判断すると、無事な方の手でスマートフォンを操作し、執務室に連絡を入れた。
「ハルか? 今から戻る。歩きじゃ時間かかるから、ヘリを寄越してくれ。ああ、近場のポイントを教えろ。……わかった。10分後に向かう」
先頭に龍之介、中央にユージンを背負ったルイ、後方にマコトの陣形で歩き始めた。
今襲われたら、状況はかなりシビアだ。
他に敵がいないことを祈りつつ、一気に歩く速度を上げた。
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