アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
勝算(士郎side)
-
広幅のピアノ用の椅子に再び深く腰かけて、一度深く吐息した。
……なぜ、こんなことになった?
頭の中を後悔の嵐が吹き荒れる。
隙を見せた。
ピアノの旋律が遠い記憶と結びついて、一瞬、反応が遅れた。
予想以上に抱かれた夜の記憶を肌が覚えていることにも、愕然とした。
挙げ句の果てに勝負の二文字で煽られ、退路を絶たれた。
詰将棋で数段上の敵と戦っているような気分になる。
指一本触れるなと抵抗してはみたものの、捕食される自分は、さしずめ追い詰められた草食動物のようだ。
全裸をさらし、自らの劣情で濡らした指先で奥を暴く?
ありえないほどの屈辱と羞恥で、目眩がした。
逃げ出せるものなら逃げ出してしまいたい。
だが目の前には、腹を空かせたライオンのように獰猛な目をした龍之介がいた。
その瞳が、けして逃がさないと語っている。
できないと一言言えば、この男は自分に興味を失うかもしれない。
それですべては終わる。
平穏な日々が戻ってくる。
なのに、なぜ自分は屈辱に耐えながら、震える脚を開いていくのか。
「……見えねェ。もっと腰を前に突き出して、奥の奥までさらせ」
「……っ」
いくら勝負を挑まれたからとはいえ、限度というものがある。
普段の自分なら、けしてこんな愚かな誘いには乗らない。
最初からそうだ。
この男が相手だと、うまく自制心が働かない。
いつの間にか引くに引けないところまで追い詰められている。
「……どーした? 早くしねェと指先が乾いて、ツラい思いすンのはオマエの方だぜ?」
龍之介がわざとらしく、節くれ立った自らの指を舐めながら、煽ってくる。
「……っ」
まるで己の指を舐められているようで、心臓が跳ねた。
キュッと下肢が張り詰め、隠せない状況に舌打ちした。
気づいた龍之介が笑う。
「……オトコは感じりゃ堅くなる。素直でイイ反応だ。ついでに奥も締まったの……わかるよな?」
淫らな声と視線で犯される。
熱さで目が眩みそうだ。
「……物欲しそうにヒクついてやがる。ずいぶんとエロく誘うモンだなァ」
誘ってないと言おうとして、口をつぐんだ。
これは勝負なのだ。
煽るか、煽られるか。
形はこの際、どうだっていい。
大切なのは、あの夜に砕かれたプライドの再構築であり、この男をやり込めることだ。
触れることを禁じたから、あの気功もどきの妖しい熱に捕まることもない。
濡れた髪を乾かす暇もなく追いかけてくる程度には、この男だって自分に夢中なのだ。
……勝算はある。
覚悟を決めると、空手で培った呼吸法で自らを落ち着けながら、窄まりに震える指先を這わせた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
61 / 261