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悶々(士郎side)
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「……達也、稽古につき合え」
達也の部屋を訪れるなりそう言うと、ソファで寄り添い、くつろいでいた克己と達也が目を丸くして顔を見合わせた。
「……ずいぶん、いきなりですね。何かあったんですか?」
「別に、何もない」
ただ思い切り身体を動かして、頭を真っ白にしてしまいたいだけだ。
達也とはうまい具合に実力が均衡しており、実戦形式で稽古する相手としては申し分なかった。
行くぞ、と踵を返しかけたその時、
「シロちゃん、もしかして欲求不満?」
あっけらかんとした顔で、克己がとんでもない爆弾を投下してくれた。
「……は?」
脳が一瞬、フリーズした。
その後、ぶわわわっ、と羞恥が全身を駆け巡る。
「なにそのカワイイ反応っ」
「……黙れ」
「いったいどんな抱かれ方したら、そんな風になるんだか」
「みーちゃ……っ」
克己の唇を、慌てて手の平で覆った達也が、貼りつけたような笑顔でまくし立てた。
「オレも士郎さんと練習したいですっ。そりゃもう、ものすごく! でも今、龍之介さんもいなくて、みーちゃん一人にできないし、今度改めてでもいいですか……?」
言われて、ハッとした。
実戦形式の練習ともなれば、克己に目が行き届かないことも出てくるだろう。
部屋に置いていけば安全だが、素直に聞き分ける克己でもない。
そんな簡単なことさえ失念していた自分に、愕然とした。
「とりあえず、座れば?」
駆け寄ってきた克己が、呆然と立ち尽くすこちらの腕を引いて、ソファに導いていく。
「……どうぞ」
達也は達也で麦茶の入ったグラスをセンターテーブルに乗せると、深刻な顔で正面に座った。
「話は戻るけど、シロちゃん、ホントどうしたの?」
「……どうもしないが?」
「自覚ナシ? ……困ったね」
本当に困ったように、克己が笑う。
「顔色は悪いし、目は血走ってるし、余裕ないカンジで、ちょっと怖いよ?」
「でもあのっ、それがみょーに色っぽいっていうか、……って、別に変な意味じゃなくて!」
克己に睨まれて、達也があわあわと否定する。
「とりあえず、スッキリさせた方がいいのは確かだね。じゃないと、変なの引きつけちゃいそう」
ここ数日、妙な視線を感じたのは、気のせいではない……?
「龍ちゃんといろいろあってから、妙なフェロモン出てるの、いいかげん自覚した方がいいよ?」
「フェロ……っ」
「何しろ、僕で満足してるはずの達っちゃんが、こんなコト言うくらいだもん。ね?」
達也に向ける克己の、天使のような笑顔が逆に怖かった。
達也の顔から、みるみるうちに血の気が引いていく。
「だからっ、オレは別に士郎さんのことなんて何とも思ってないし! っていうか、みーちゃんだけだし……!」
「……ふぅん? まぁ、いいや。後で、身体に聞くから」
小悪魔な笑顔に、達也の顔がドッと赤面した。
頼むからそういうのは二人の時にやってくれと、天を仰ぐ。
「で、シロちゃん、実際のトコどーなの? 一人でして、満足できてる?」
「……っ、あからさまにそういうことを聞くな。……そもそも、おまえに何の関係がある?」
「だって、龍ちゃんのエッチって中毒性高いから、心配なんだもん」
克己がため息をつく。
「みーちゃんっ!?」
「僕は、あやしてもらってただけ。本気でエッチしたことなんて、一度もないし」
「でも、したんだ……」
本気でショックを受けている達也に、克己が愛らしく小首を傾げた。
「妬ける?」
「当たり前だろ……っ」
「ふふっ、嬉しい……」
「……みーちゃんのバカ」
「達ちゃん、大好き」
「……オレの方が何倍も好きだっ」
だからそういうのは2人の時にやってくれと、げんなりした。
そもそも自分は欲求不満などではないし、龍之介の声や熱を思い出して悶々となどしていない。
ましてや、ここ一週間姿を見せない龍之介にイライラするなど、けしてない……そこまで考えて、頭を抱えたくなった。
「けっこう重症?」
「……帰る」
「龍ちゃんがしばらく姿を見せないのは、よくあることだから、あんまり考え過ぎない方がいいよ?」
もはや答えを返す気力もなく、達也の部屋を後にした。
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