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懐かしい顔(龍之介side)
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「リュー、話がある」
学園に戻り、執務室に武器を置きに帰ったところで、回復室から出ることを許されたユージンに声をかけられた。
「……悪ィ。後でいいか?」
今は一刻も早く士郎に会いたかった。
愛用のサブマシンガンを置く動きさえ乱暴になる自分に、苦笑した。
身体中に仕込んだ武器を外し、汗臭いかとシャワーを迷ったところで、腕を取られた。
「……ンだよ」
多少の苛立ちを込めてユージンを見たところで、動きを止めた。
何日も寝ていないかのような憔悴しきった顔。
まるで一気に年を取ってしまったかのようだ。
「……どうした?」
ユージンはこちらの瞳をじっと見つめると、一度大きく息をつき、腕を離した。
「……ジンから連絡があった」
「いつ……!?」
反射的に、ユージンの肩をつかんでいた。
「……っ」
ユージンの顔が歪むのを見て、慌てて離す。
「……悪ィ」
落ち着け自分、と髪をかき乱し、呼吸を深くした。
ユージンの様子を見ればジンにただならないことが起こっているのは確かで、そういう時こそ冷静にならなくてはと教えてくれたのは、他ならないジンだった。
「で、何か言ってたのか?」
ユージンは黙ってパソコンを操作すると、映像を見せた。
懐かしい顔に、胸がギュッと締めつけられた。
次第に真夏の太陽に照らされたように熱くなる。
太い二重のラインがうっすら入った、幾分垂れた大きな目に、コアラを彷彿とさせる鷲鼻、大きめの唇。
日に焼けた肌は褐色で、髪は金髪に近い茶に変色している。
表情はどこまでも突き抜けて陽気で、見る者を引きつけてやまない。
別れてから10年以上が経つが、多少年を食ったくらいで、変わらない姿に安堵した。
元気そうだ。
少なくとも、今はまだ。
画面の中で、ジンとユージンの会話が展開していく。
映像が途切れた瞬間、思わずスクリーンにすがっていた。
ブワッと吹き抜けていく感情は、懐かしさと喜び、怒りと寂しさ、そして底知れない恐怖のすべてを凝縮した、震えるほどに熱い感情だった。
確実にジンは事を起こすつもりだ。
ここぞという時に命を惜しむような男ではない。
目的はわからないが、文字通りすべてを賭けるつもりなのだろう。
今、自分には何ができる?
何より、どうしたい?
考えた瞬間、すっと冷静さが戻ってきた。
「ハル、すぐにジンの周辺を探れ。ルイ、マコ、しばらくは緊急事の態勢でいく。いつでも出られるようにしておいてくれ」
普段は閉鎖している司令室の稼働、役員棟地下の秘密ルートの解放、装備品と備蓄の確認、身辺整理、やることはいくらでもあった。
「……ジンの邪魔をする気か?」
再びつかまれた腕を、振り切った。
「あいにく言われたコトにハイハイ従うよーな過保護な教育は受けてこなかったからな。ちゃァんと自分のアタマで考えて、己の信じた道を行く。……そう育てられた」
射抜くように見つめ、言い捨てた。
次第に腹が立ってくる。
「オヤジのピンチに情けねェ面して下向くだけなら、誰にでもできる。足引っ張るのが怖ェなら、家帰って震えてやがれ……!」
攻めた果ての失敗に、あれほど寛容な男はいなかった。
「ジンはな、どんな結果になろーがそれも運命だって、きっと笑う。オレらはただ、ガキが立派に育ったってトコを見せつけてやりゃいいんだ」
わかったら、グダグダ言わずについて来い、と傷を避けつつユージンの胸に拳を入れた。
「……ったく、この忙しい時に、くだらねェことに時間使わせやがって!」
自分なりに喝を入れたつもりだが、ユージンは目を見開き固まっまま微動だにしなかった。
これはダメだと、ため息をついて踵を返せば、再び腕をつかまれた。
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