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訓練(龍之介side)
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左手だけでサブマシンガンを構え、スクリーンの中の動く対象を仲間と見分けながら次々と撃ち取っていく。
両手に比べ、どうしても命中率が下がる。
最後に表示された数値を見て舌打ちしたが、どうしようもない。
もはや自分の手の一部にさえ感じられるほど馴染んだ武器である。
本来のクオリティーの高さを引き出してやれない自分が歯がゆかった。
休まず戦闘モジュールに移る
こちらは己の脳波と連動させたバーチャルだ。
身体に密着するBOX型のシートに腰掛け、スポーツカーのガルウィングドアに似た造りのドアから中に入る。
自動でドアが閉まると、専用のヘッドホンとアイシールドを装着した。
薄暗いBOX内にいると、ひどく落ち着いた。
羊水に揺られていた頃の、何の不安もなく守られていた時代の温かな記憶が蘇る気がする。
やがて無限に近いプログラムの中から自分のレベルに合ったものが選び出され、提示された。
反射速度を鍛えるプログラムを選び、全身の力を抜いた。
森の中をひた走る。
渡されている弾丸は、敵の数と同じ10個だけ。
敵は地の利を活かし、そこかしこに隠れ、こちらの動向をうかがっている。
天気や無数のトラップにも気をつける必要があった。
草の生える向きや色に不自然さはないか、ワイヤーを思わせるおかしな反射はないか、敵が潜める場所はどこか。
無数のセンサーを同時に極限まで働かせなければ、生きては帰れない。
これがバーチャルだと高を括るのは簡単だ。
やられても当然何度でもやり直しがきく。
だが精密に造りこまれたバーチャルをいかにリアルだと思い込み、入り込めるかで、訓練の密度と達成度は格段に高まる。
それがそのままギリギリの場面で生還できるか否かにつながると、数々の戦場を経験するうちにわかってきた。
己の想像力の限界を試される。
経験を積むたびに新しい側面が見え、訓練も密度を増していく。
自分が敵ならどこに潜み、どこにトラップを置くか。
逆算すれば、自ずと進むべき道が見えてくる。
空気がどことなく重い。
雨が降りそうだ。
ぬかるんだ土に足を取られると厄介だった。
一気に難易度も増し、敵の匂いも消える。
サイレンサー付きの小型の銃片手に全方位に意識を行き渡らせると、小走りで駆け抜け、敵を陽動した。
弾丸が飛んでくる。
弾の飛んでくる方向から、潜伏場所が読めた。
ギリギリのところで弾が当たるか当たらないかは、実は運によるところが大きい。
なるべく敵との間に障害物を置き、姿をさらさないようには当然するが、当たったら当たったで仕方がない、それも運命だと思えるようでなければ冷静には戦えない。
ギリギリのスリルがたまらなく好きだった。
一瞬が光のように色濃く凝縮されていく。
やがて静寂が戻る。
スクリーンにオールクリアの文字が示され、深く息を吐いた。
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