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終わらないで欲しい(士郎side)
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唇に触れるギリギリのところに己のそれを寄せると、吐息がかかる距離でささやいた。
「……今夜、おまえは何もするな。手を出したら、そこで終わりだ」
「……で?」
楽しげにアゴでしゃくり、先を促してくる。
触れそうになる唇に、心臓が跳ねた。
「……オレがおまえを感じさせてやる」
「初心者に、できンのかよ?」
「オレをおまえが今まで抱いてきたヤツらと一緒にするな。欲しくて欲しくてたまらない身体が、意思を持って自分の上で動く。……興奮するだろ?」
「そりゃ確かに、聞いてるだけで溶けそうだ……」
「忘れられなくしてやる」
独り寝の夜に思い出しては身体を熱くするくらい、自分の中で溶ければいい。
「……いいぜ、受けてやる」
やがて、龍之介が言った。
契約は交わされた。
ドアに向かい歩き出すと、背後から腰を抱かれた。
寄り添う身体が熱い。
目線の位置は龍之介の方が拳一つ分高かったが、克己の隣を歩く時とは違い、何もかもがピタリとあるべき場所に収まる気がする。
腰にあった手がいたずらに降りていくのを感じて、ため息の中で捻り上げた。
「……部屋まで待てないのか?」
「ああ、待てねェな」
ベッドまでの距離が永遠にも感じられるのは、自分も同じだ。
それでいて永遠に辿りつかなければいいとさえ思ってしまう。
今の互いを求め過ぎて昂ぶった心と身体を抱えたまま、何一つ終わらなければいい。
だが願っても時は流れ、感情の高波もいつかは砕け散る。
わかっているからこそ、人はこんなにも誰かを愛しく想うのかもしれない。
いつになく感傷的になっている自分を笑い、自ら龍之介の腕を引いた。
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