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足りない(士郎side)
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龍之介が素早くカードを通し、暗証番号を打ち込んだ。
さらに指紋認証を経てドアが開いた。
先に入れとうながされ室内に歩を進めると、センサーが感知して自動で明かりが灯る。
入り口に目隠しとなるボードが置かれ、その奥に20畳程度の空間が広がっていた。
否応なしに奥のベッドが目に入り、コクリと喉が鳴る。
背後から首に腕を回され、身体を密着された。
「……もう、逃がさねェ」
濡れた声でささやかれ、グッと熱を押しつけられると、身体の奥が甘く疼いた。
眠れない夜、この熱を思い出しては何度も自分を慰めた。
欲望を吐き出してもまるで足りなくて、よりいっそう欲は募るばかりで。
ヒリヒリと痛むほど擦りながら、自分は気でも狂ってしまったのではないかと、何度も恐怖に襲われた。
満たされない。
あの熱なしでは、もう二度と。
……龍之介が欲しい。
認めるのが怖かった。
認めてしまえば、こんなにも心は凪いだのに。
「何、笑ってンだよ?」
笑ってる?
……そうか。
「……おまえに馴染んでいく身体が怖かった」
自分が自分でなくなってしまう気がして。
同じ男である克己を抱いていながら、今さらかもしれないが、抱かれて感じる自分にひどく引け目を感じていた。
男である以上、その思いはこの先もけして消えはしないだろう。
それでも。
「おまえがオレのものになるのなら、かまわない」
何もかも、すべてに目をつむろう。
「……オレはとっくに、オマエのモンだぜ?」
「……もっと」
「……足ンねェ?」
「ああ、まったくと言っていいほど……な」
自分が独りの時間、気が狂うほど龍之介を求めたように、狂って落ちてくるくらいでなくては満たされない。
龍之介が笑った。
「克己からは淡白で困るって聞いてたンだが、案外貪欲だな」
「……普通だろ?」
惚れた相手を全部喰らい尽くしたいと願うのは、男の本能だ。
「で、どーする?」
「……決まってるだろ」
首に巻きついた龍之介の腕を解き、ベッドまで手を引くと、胸の中央を押して、スプリングの上に転がした。
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