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許される
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何も言い返さなくなった俺に、柳瀬は嫌らしく笑うと頬を撫でた。
「なぁ、やっぱり俺にしとけよ。草薙も月島も、お前のことなんて見てくれないぜ?俺ならずっと見てきたから分かる。な?」
優しい声音に揺らぎそうになった。
けど、柳瀬が吹っ飛んだ。
比喩ではない、本当に。
「ねぇ、なにしてるの?」
冷ややかな声が聞こえた。
「...すずめ?」
蹴りを入れた体勢で柳瀬を睨む雀がいた。
雀は、俺の方をチラリと見た後また柳瀬に向き直った。
「誰が、誰を、ずっと見てきたって?嘘言わないでよ。本当に柳瀬が伊吹を見てきたって言うなら、伊吹がこんなに苦しむわけない。伊吹が一人で泣くわけない。一人で、死のうとなんてしない」
死ぬという単語に柳瀬が驚きの顔を向けてくる。その視線に俺は顔を逸らした。
「本当なのか?宮下...」
沈黙がそれを肯定する。
「もうやめてやんな。自分の思い通りにならないからって、伊吹の思いも草薙の思いも、弄ぶのは」
そこまで言い放って、雀が俺の方を向く。
「立てる?行こう?」
そうして手を伸ばしてくれた。
その手を取ろうとしたとき、柳瀬から声がかかった。
「...行くな!」
切ない声で俺を呼ぶ。
だけど、俺は。
そのまま、雀の手を取った。
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