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始まりの告白Ⅳ
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「はぁあ!? お前俺のこと好きなんじゃねえのかよ!?」
「名前なんて目もくれないくらい君が好きみたいだよ。」
「嘘つけ。絶対思い込みだろ。」
──思い込み……?
「どう言うこと?」
「だから……!!」
彼はそう言って私を見て、急に黙り込んでしまう。俯いたまま絞り出すように口にした。
「悪かったよ……。虜にしろ発言は無しにしてくれ……。」
「いいの?」
「だってお前、俺の好きなとこ、どこか言える……?」
「──そんなのもちろんッ!! 全部好きッ!!」
「そうじゃなくてッ……!! それじゃだめだろ、どう考えても思い込みだろそれ。だって俺、性格悪いし……。」
「自覚してたんだ。」
「お前なぁ……。」
彼は自身の髪をわしゃわしゃと掻き上げて、私に困ったような視線を当てる。
「それ桂だよな?」
「うん? まあ。」
「メイクしてるよな?」
「うん……? してる。」
「ジャージあるよな?」
「う、うん……? あるけど……。」
彼は言いにくげに私の表情をちらちらと窺った。
「男に戻ってきてよ、やりづらいから……。」
「何を?」
「何って……。い、いいから!」
彼にぐいぐいと押されて、仕方なく今朝の努力の結晶達を脱ぎ捨て、落として、懐かしい自分へ戻ったのだった。
「うわぁ~俺イケメン。マジイケメン惚れるわぁ。これ絶対惚れるわぁ。」
──ああしんどい。無理だ。無理だ無理だ無理だ。ちゃんと男でいられるか……。
トイレの鏡を見ながら、歩いてみる。
「女子歩き……!! 何と美しい足運び! 俺可愛いっ!! けど男姿だとキモいっ!!」
──どうしよう……このまま外に出たら変人だと思われる……。
壁に手を付けて落胆していると、すぐ後ろで、コンコン、と入り口の壁を叩く音が聞こえた。
顔を上げると、叩いた張本人は真っ赤になって俺を見つめた。
「あ、えと……大丈夫? 顔色悪いけど……。」
「トモくん……。」
「……そ、その声……。」
あ、ヤバイ。
どうしようトモくんに変人だと思われたくなかったぁぁあ!! そうか、声か、声も地声に戻さないと!!
「えーと、あ、あ~。あ、うんんっ。あ~いう~。」
「ぷくくっ……。」
げ、ヤバイ。
絶対完全に完璧に変人だと思われたあああああっ!?
ど、どうしようトモくんお腹押さえてる笑ってる……!!
「やっぱり、白舞(しらぶ)だ……!」
「ト、トモくん? 何で分かったの? やっぱり声?」
「……声、もだけど、仕草とか反応とかっ……!」
笑ってる……俺の顔を見る度に泣きそうになってたトモくんが……。
「それって男装?」
「え、あ、いやぁ……これは……その、これが本体と言うか……。」
「ん? えっと……?」
「俺、男なんだよね……。」
トモくんは綺麗な顔を歪ませて、んん、と唸って首を傾げた。
「ふええええぇぇぇえええええええええええええええぇぇえええええええええええ─────ッ!?」
「わ、わぁ……大きな声。」
トモくんはグワシッと肩を掴みユッサユッサと揺する。激しい波に揺られてる気分、わぁ酔いそう……。
「ほ、本当に!? 本当に!?」
「う、うん、ごめん。騙したみたいになっちゃって……。て、て言うか騙したんだよね……! ほんと、ごめん……。」
俯いたまま彼の表情を見ることが出来なかった。
彼の息を呑む音が聞こえて、ザッと足が動かされた。
視界に彼の足が写ったと思ったら、人肌の温もりが全身に触れていた。
トモくんの匂いが鼻に付く。
……今までにない程鼓動が早い。
鏡に写っていた俺達の姿を見て、やっとトモくんに抱き締められているのだと気付いた。
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