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023 謁見
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サディに背負われながら、長い廊下を進む。
その建物があまりにも広くて、とんでもない所に来てしまったのではと不安になる。
『お城みたいだね……』
返事はこないとわかっているから、これは殆ど独り言だ。
扉の数も多く、迷路のような作りなのに、誰一人としてすれ違う人がいないことも、不安を煽る要因だった。
先程紹介されたジーナは、紫の髪と目をした人で、髪と同じく服の色も紫だった。
身長はサディより少し低いくらいだろうか。それでも充分過ぎるほど大きかった。
サディも髪が長いけれど、ジーナはもっと長くて太ももまである。
男の人なのに……という抵抗はなかったのは、きっとそれが凄く似合っていて、全く不自然ではなかったからだと思う。
しばらく進むと、今までで一番大きな扉の前に着いた。
その扉の両側に兵士のような人も立っている。
(良かった。ちゃんと人がいた……)
兵士はそれぞれ、緑と紺の髪、目は赤と茶色だった。
どうやら目と髪と服の色、全て一緒の人ばかりということはないようだった。
ただ共通するのは、どの人も全て大柄であるということだ。
きっとこの世界では、僕が特に小柄な部類なのだろう。
サディに背から降ろされ、直後乱れた服を整えられる。
サディもギルトも、時折小さい子を扱うように僕に接してくる。
「自分でできる」と訴えようとすると、ギルトにもまた頭を撫でられた。
悪気なくしてくるのだろうけれど、僕にはそれが気恥ずかしく思えた。
「ジーナです。水神様をお連れ致しました」
ジーナが一礼してその大きな扉の中へと入って行く。
僕もその後に続くよう、サディとギルトに挟まれ促された。
広い部屋だった。
扉も大きかったけれど、中の部屋も随分と広い。
――神殿のような高い吹き抜け。
上部の装飾の施された大きな窓から入り込む光が、キラキラと輝いて差し込んでいる。
その部屋の奥――少し高い位置にある椅子に座る男と視線が合わさる。
(綺麗な人……)
褐色の肌に、金色の瞳。その男に近付くにつれ、男の目が僕を見つめてゆっくりと細められる。
何故だろうか、ドキリと、心臓の音が強く聞こえた。
(ん……?)
それは一瞬のことだった。男の秀麗な顔が少しだけ、寂しそうな表情を見えた気がした。
けれどそれは気のせいだったようで、男はまるで氷のように無表情だった。
男の鮮やかな金の髪は肩にかかるほどの長さだ。服は白が基調だが、金糸で装飾されている。
その男の面前までくると、サディもギルトもジーナも、深々とお辞儀をした。
(何だろ……? どこかで会ったような気がするんだけどなぁ……)
これだけ綺麗な人なら、一度出会えば絶対忘れないはずだ。
曖昧な記憶をさぐるが、一向に何も思い出せない……。
――――「『*********』」
傷などないはずの指先が痛む。
頭の中に響く声と、頭痛。
――目眩。
(思い出しちゃいけない……)
本能的にそう感じた。
混同する記憶から意識を反らす。
立っているのも辛くて、近くにいるサディに寄りかかりながら目を瞑る。
(こんなんばっかだなぁ)
自分の身体なのに、訳もわからずふらついてばかり。
この世界は嫌いじゃないけれど、上手く順応できない。
(もう、帰りたい……)
こんな所で寝てしまったら怒られるだろうか。
そう思ったけれど、そのまま倦怠感に身を任せる。
(帰りたいな……)
今まで疎外感を感じつつ、普通に生活していた日常が恋しい。
何もない日常も、今思えば幸せな日々だった。
何度も繰り返し名前を呼ばれているような気がする。
けれど、徐々に意識は遠のいて行った。
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