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038 早急
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手を貸して貰えるのは感謝する。
そう、感謝しよう。
僕の力だけでこの東塔の階段を上りきるのは、到底無理だろう。
「ハリル! いいよもう! 降ろして!」
だけど僕は、真っ赤になってそう訴えた。
てっきりいつものように背負われるのかと思っていた。
なのにまさか、お姫様抱っこをされるとは思わなかったのだ。
前に抱き締められた時―――リィーリの泉に行った時とは違う。
あの時はハリルとキスをする前だった。
ハリルと結婚をさせられるのも知らなかった。
けれど今はもう、意識をしてしまっている。
暴れて降りようにも、高さへの恐怖から暴れきれない。
でも高さに怯えているとはハリルには言えなかった。 なんとなく、彼に見縊られるのは嫌で、変に意地を張ってしまう。
そうしてしがみつくことを拒否したせいで、身体が固く強張るから余計に怖い。
これなら自分で歩いた方が絶対に良かったはずだ。
例え朝までかかっても、絶大に今よりマシだった。
恥ずかしさで憤死しそうになりながらも、ようやく最上階の貴賓室の前まで来た。
このまま僕を降ろしてハリルは帰ってくれないかと、そんな期待をしたけれど――残念ながらそんなに都合よくは行かないわけで……。
僕を抱いたまま、ハリルは器用に部屋に入り、そして鍵を閉めた。
「あ、あのっ」
(どうしよう……嫌な予感がする……)
僕はベッドの上に落とされる。
実際は凄く丁寧に置かれたけど、気分はもう投げ飛ばされたのと一緒だ。
見上げると、ハリルが僕を見下ろしていた。
誰も来ない塔の上で、二人っきり……。
囚われのお姫様なら、ここで王子様が助けに来てくれるのかもしれないけれど……目の前にいるのは王様だ。
金髪の長い髪を、彼がゆっくりと搔き上げる。
(まずい! 絶対にこれはまずい!!)
こんな状況なのに、一瞬だけハリルの容姿に見惚れていた。
無言でのしかかってくるハリルに、何か言わなければと頭では思うのだが、咄嗟に言葉が出てこない。
「わぁっ……待って! ね、ハリルっ」
服の裾を捲られそうになり、必死で抵抗する……が、やはりこの体格差は大き過ぎる。
抵抗した腕はハリルの手で……しかも片手で簡単に一纏めにされてしまう。
「やだ! ハリルやだっ! いやっっ!!!」
(怖い……! 凄く怖い……!!)
「ハリルっ!!」
一瞬頭に牢の映像が浮かび、そして消える。
(ああ……また……)
懸命に首を振り脚をバタつかせて嫌がる。
けれどハリルの手は止まることなく、僕の服を脱がしにかかる。
(わぁ! どうしようっ!!)
「や、やめてっ……!」
恥ずかしさを感じる間も無く、上半身を露わにされた僕の身体。
そこにゆっくりと、ハリルが指を這わす。
――少し冷たい、ハリルの指先。
「やっ! やだぁ!!」
触れるか、触れないかの微妙な触り方で、頰から首筋――
鎖骨……胸……腹部へと指が下がってくる。
それだけで、ゾクゾクと鳥肌が立つ。
先程から動悸が止まらない。
不安と恐怖が渦巻く。
「……感度は相当いいらしいな」
「うぅ……」
恥ずかしいのと、悔しいのと、怖いので、涙が浮かんでくる。
ハリルの顔が近づいてきて、思わずキツく目を瞑る。
(キッ、キスされる……)
そう思ったけれど、ハリルの唇は僕の瞼に落ちた。
ハリルの顔が近すぎて目を開けられない。
唇は頰を伝い、首筋へとゆっくり下りてくる。
もう息をするのも苦しい。
まるで息の仕方を忘れてしまったようだ。
「……ひゃっ!」
首筋にハリルの吐息がかかる。
首筋でビクリと痙攣した僕を見て、そこが弱点だと気付いたのか……何度もそこを責められる。
擽られ、舐められ、吸われる。
その度に必死に声を我慢するが、身を捩ってる以上、反応しているのが嫌でもわかってしまうだろう。
「ぅっ……」
「大丈夫か? まだ始まったばかりだぞ?」
楽しそうに笑うハリルが憎らしい。
「くすぐったいだけだっ!」
強がって睨むと、ハリルはまた楽しそうに、けれど凄く意地悪く笑った。
「もうっ! 離してよ!」
少し強めに訴える。
すると呆気ないほどすんなり、彼は僕の手を離してくれた。
(よ……よかった……)
耳元で鳴る鼓動はまだ治らなかったが、両手を離されたことにより安堵する。
サディとギルトが外出した初日に、こんなセクハラをされるとは……。あまりにも手が早すぎる。
はだけた服を胸の前で合わせて身体を隠す。
褐色の肌で、恰幅のいいハリルと比べたら、自分の身体など惨めなだけだった。
痩せて青白く、貧相な身体――時間差で訪れた羞恥。
恥ずかしさで顔から火が出そうだった。
――しかし、ハリルはまだ僕の上から退かない……。
「あ……あの……」
彼は無言のまま、よりにもよって僕のズボンに手をかけてくる。
「えっ!? ハリル!?」
(まだ、終わりじゃないの……!?)
順序立てとか、そういうのはないらしい。
「待って……! ねぇ!」
王様とはこうも身勝手な生き物なのだろうか。
ハリルの手に力がこもるのを感じ取り、思わず叫んでしまう。
「やだハリル!――――僕っ、まだ子供だから!」
咄嗟に口から出た言葉。
僕の言葉を受けて、ハリルの手は止まった。
「子供……だから……」
グルグルと込み上げてくる不安。
そう、子供だ。
子供だということになってるじゃないか。
僕の目を見てハリルはククッと笑い、「大丈夫だ」と優しく言う。
抱きしめるような仕草をされ、もしかするとこれで止めてくれるのかと、淡い期待が込み上げてきた。
だが、そのまま耳元で囁かれた言葉に僕は絶望する。
「初夜に向けて、慣らすだけだ」
僕が目を見開いたと同時に、いっきに下肢が露わにされる。
咄嗟に手で股間を隠そうと伸ばすが、間に合わなかった。
僕の股間に注がれる視線に真っ青になる。
僕のモノは、さっきの行為で既に反応を示していた。
「子供……ねぇ?」
そこから僕の顔に視線を戻し、ハリルはまるで揶揄うように笑う。
僕の体毛は薄くて、腕や脚ですらクラスの女子に揶揄われるほど生えていない。
性欲もそんなにないから滅多に自慰をせず、まだ剥けてはいなかった。
でも――僕のモノはこの国の10歳の子の形状と同じぐらいなのだろうか?
股間を見られる恥ずかしさよりも、自分がついている嘘に矛盾が生じてるのではないかと恐ろしくなる。
「戯れようか、イズミ」
聞き覚えのある言葉だ。
ハリルは、前に僕がサディに抱きついて言った言葉を、敢えて選んで使ってきているのだ。
そんなハリルが怖くて、僕はまた顔を逸らし、強く目を瞑った。
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