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052 記憶
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――――薄暗い部屋に、下卑た笑いが響いていた。
噎せ返るような暑さの中、怠くて指一本も動かせない。
もう既に抵抗する気力も体力もないのに、両手を強引に掴まれ 乱暴に上へと引き上げられた。
吊られた腕だけで全身を支える。
僅かに着く足先では、体重を支えきれない。
肩や腕に負担がかかり、酷く痛んだ。
目の前には巨大な複数の男たちが、口々に何かを叫んでいる。
――――響く怒号。
――――破られた服。
ゴツゴツした手が、僕の身体を翫ぶ。
男が僕の身体に何度も噛み付き――――
痛みで身を捩るたびに嘲笑われる――――
そして……背中に奔る、体験したことのないような激痛。
浮かび上がった身体では逃げようがない。
何度も殴られる衝撃で、肩の関節が外れたのがわかった。
嘲りの言葉。
下卑た笑い声。
何を……?
何を言ってるの…………?
薄暗い部屋……。
血生臭い匂い……。
ここは…………牢の中…………?
記憶の中の声……それは突然理解できた――――
「水神と名乗り出るなど痴がましい!! 水神などおらぬ!! 国税を貪る貪欲な乞食め!!」
これは、僕の両腕を掴む男――――
「見てみろ、こいつ失禁しているぞ! 身の程を知れこの売女! 貴様のような穢れた者が、水神なわけがない! この偽り者め!」
これは、僕の身体に噛み付く男――――
「貴様など小綺麗なだけ! 水神と振舞うなど、金と権力に目が眩んだ罪深き卑しい囚人だ!」
これは、僕の身体を弄る男――――
「ハハハ! 全く、随分と無様な姿だ! 実に穢らわしい!! こんな無様な者が水神だとは……笑わせてくれる!」
これは、罵り嘲笑う男――――
「この後も楽しみにしていろ! 素晴らしい拷問を用意してやる! これは国王陛下のご意思なのだ!!」
これは、何度も鞭を振り下ろす男――――
僕の首を這う舌――――噛まれて激痛が走る。
「貴様などいらぬ!」
「国王を誑かそうとする売女め!」
「たっぷりといたぶってやる!」
「水神は死罪だ!」
「国王陛下のご命令だ!」
身体中を奔る激痛。
這わされる舌と、弄ってくる手の嫌悪感。
下卑た笑いを浮かべながら男が耳元で囁いた――――
――――「『お前は水神ではない』」
痛み、屈辱、嫌悪、絶望、恐怖――――有りとあらゆる負の感情が入り混じる。
そのさなか――――男の舌が、ゆっくりと下腹部へと下がってくる。
そして――――
「うわぁあぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
「黙れ! そんなに強くは噛んでいない!」
ハリルの怒鳴り声で、我に返った。
「ひいぃっ!! ひぁっ!!!」
がむしゃらに暴れる。
これは夢なのだろうか。
どれが夢なのだろうか。
言葉にならない悲鳴が、止めどなく口から溢れてくる。
身体中が痛い。
あの時の痛みが全身を駆け巡る。
「ぁぁああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「黙れと言っている!!」
叫び声をあげて開いた口に、ハリルの手が覆いかぶさる。
「………!!!」
すると不思議なことに、声が出なくなった。
ガタガタと身体の震えが止まらない。
助けて……。
助けて…………。
怖い………………。
(ハリル……)
息が漏れるだけで、どんなに叫んでも悲鳴は出なくなっていた。
(ハリルが命令して、僕をあんな目に合わせたの……?)
そう聞きたくても、もう声は出なかった。
「怖いか? イズミ」
――――ハリルの乾いた笑いと、僕の荒い息遣いだけが部屋の中に響く。
どうせ抵抗しても敵わないのに……縛られた腕は一括りにされ、頭上に退かされる。
僅かに残った服は、僕の冷や汗を吸収し肌に纏わりついていた。
唯一自由になる脚もハリルの身体が間に入込んで、閉じることすらできなかった。
「っ……!!」
怖かった。
涙が頰を伝う。
今度は一度大きく首筋を舐められ、その後に強く吸われた。
「っ……!!」
「外で何をしてきたか、答えたくなる頃に解いてやる」
(もう理由は話したのに……)
助けを訴える悲鳴も、記憶が戻ったことを訴える声も、もう出なかった。
(聞いて、ハリル……お願い……)
指の先まで冷たくなるような感覚。
目眩がする程の恐怖……。
ブンブンと首を振り、懸命に彼に訴える。
(やめて……お願い……)
しかし、それすらも許さないというように、ハリルに無理やり身体を押さえつけられた。
残った服を脱がしながら、ハリルの手が僕の身体を弄ぶ。
身体中に唇を這わしながら、何度も吸いつかれる。
――――その行程が、あの牢で男達と重なり、思わず身を捩る。
――――「『お前は水神ではない』」
男の声が、頭に響く。
(僕は水神じゃない……)
幾度も、記憶の中で呼びかけられていた言葉だった。
(なんであんなことしたの……?)
またハリルの歯が、皮の薄い部分の肌を突き刺す――――
「っっ!!!」
(僕は……この国には望まれていなかったの……?)
涙が、頬を伝う……。
噛まれた痛み――――牢の中とリンクする。
(だから……こんな仕打ちを……?)
必要ではない水神の存在……。
「!!」
這わされるハリルの舌が、ゆっくりと下がってくる……。
(やめて! ハリル)
「……っ!!! っっ!!!」
紡ぎたい言葉は発せられない。
舌を這わすハリルと、目が合った。
こんな時でも、綺麗な……綺麗な金色の目……。
抵抗できない僕の身体を押さえつけ、その行為は続けられていく。
(ダメ……やだっ……そこは……)
この行為に縮こまった僕のモノを、ハリルの手が捉える。
高潔な彼の口を穢すのとが恐ろしかった。
あの牢での出来事が、繰り返される。
(あいつらと同じことをしないで!!)
形の良い唇が開き、僕のモノはハリルの口腔へと消えていく。
「っっ……!! っ………!!!」
(ハリル……僕は、ハリルのことを……)
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