アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
066 夢遊
-
夜になると憂鬱になる。
読んでいた本を閉じて、布団の中で溜息をつく。
(もうすぐ、ハリルが来る時間かな……)
以前は毎晩のように見ていた悪夢は、ここ暫くは見なくなっていた。
それでも今は、悪夢を見ること以上に不安なことがあった。
「はぁ……」
グラスに注がれた水を見て、溜息をつく。
――――それは数日前の出来事だ。
昼間リディが入れてくれた花茶が珍しくて、随分とたくさん飲んでしまった。
気を良くした彼女がその後も色んな種類の花茶を差し入れしてくれて、だからその日は寝る前に飲む水を、グラスの半分しか飲まなかったのだ。
毎晩寝る前に必ず僕の部屋を訪れるハリル――――何かをするわけではなく、「体調はどうだ」とか「今日の催しはどうたったか」とか、毎回差し障りのない話をして自分の部屋へと戻っていく。
そのハリルが、グラスに残った水を見て、少しだけ表情を変えたのだ。
……だから、それが妙に印象に残っていた。
「あれ」は夢かもしれない――――それとも、「あれ」も悪夢の一種なのだろうか。
この部屋に囚われてから何度も、あの夢に似たものを見ていたはずだ。
けれど朝起きるといつも記憶は曖昧で……けれど、これは普通の夢とはどこか違う……つまり、牢の悪夢とは全く別のもののような気もするのだ。
ベッドから起き上がり、一口……また一口とグラスの水を飲む。
例え「あれ」が悪夢ではなく事実であっても、抗う術は今の僕にはない――――それでも、確かめずにはいられなかった。
グラスの水を半分ほど飲んで、残りの水を隠すように清拭で使ったタオルに染み込ませる。
まるで、とても悪いことをしているようで怖かった。
(大丈夫……。ただの夢だもん……)
そう自分に言い聞かせて、再びベッドに横になった。
――――――――――
――――身体が重かった。
夢と現の間で意識が朦朧とする。
これは水面の夢……?
それとも牢の夢……?
これは、そのどちらでもない……。
ズクンッと、身体の奥に何かが入る感覚がした。
「術の効きが甘いな……ちゃんと飲まなかったのか……?」
声が聞こえて、目を薄っすらと開ける。
(真っ暗だ……)
開けたはずの目は、何も映さない。
「ん…………ぁ…………」
目を開ける夢を見ているのだろうか。
身体が重くて、指一本も動かすことはできなかった。
「ぁ……ぅん……」
「やはり反応があるほうが良いものだな……」
声が聞こえる。
身体が疼いて、切なくて、辛い……。
「ん……ぅぁ……」
動かない身体を必死に捩る。
(やだ……何……?)
もどかしくて、もどかしくて……とても切ない。
「気持ちいいか? イズミ……」
問われた言葉の意味も理解できなかった。
「はぁっ……ぁあぅ……」
下腹部にある違和感。
懸命に動かしたはずの身体が、僅かにピクリと動く。
「んぁっ……あっ……ぁっ」
熱かった……身体が、まるで火照ったように熱い。
「ヤァ……ぁあっ……」
熱くて熱くて――――
「はぁっ……ぁあ……」
おかしくなる。
もう、これ以上触らないで――――
「ぅんっ……ぅ……ぅう……」
全身が熱い。
助けて……助けて――――
「んぁっ……あぁっ……」
何度も身体の奥を開かせられるような感覚。
そのたびに全身が痺れるように熱い。
「ぃ……あっ……あっ……」
昇っては堕ち、堕ちてはてまた昇り詰めていく。
「ずいぶん慣れてきたな……」
「っん……あっあああ……んぁああ」
「口を開けて……」
言われる言葉に素直に従うと、何かが口に入ってくる。
「んぅ……」
「飲むんだ、イズミ」
喉の奥にほんのりと液体が注がれる。
(水……水だ……)
嚥下するほどに、朦朧とする意識が、また闇へと落ちていく。
「イズミ…………………………」
沈んでいく意識……最後に聞こえた言葉は、聞き取ることができなかった――――
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
67 / 212