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刹那の日常 3
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俺の腕の中で俯いたまま動かない梅村君をのぞき見た。すると、直ぐにそれに気づいて他所を向かれてしまう。
「俺さ」
暫くして君が話しだした。
「俺、セツとは浮気なんだ。」
え?
「俺、恋人がいたんだ。」
今にも泣きそうな顔でこちらを見てきた。
今、なんて?
ストン
梅村君を抱きしめていたはずの腕が、力なく下に落ちた。この腕を離したら君と会えないかもしれない、だから離すものかと心に決めていたはずなのに。
力が入らない。
言葉を失っている俺を見て、君は涙をこぼしている。瞳には絶望の色が宿っていた。
「透」
いつの間にかカラカラに乾いてしまっていた喉。
「透、嘘……だよな?」
止めどない君の涙。
おい、嘘だろう?
「浮気って、恋人って……なんだよ……」
振り絞って出した声は弱々しかった。そして、君は俺を軽く押して下駄箱へと走っていってしまった。普段なら微々たる力でも、今の俺には衝撃が大きくて簡単によろめいてしまう。
壁にもたれかかりながら、梅村君が走っていくのをただただ見つめることしかできなかった。
誰か、嘘だと言ってくれ。
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