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松岡の日常 4
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そうか、俺はあの子が好きなのか。
俺は、友人から梅村と呼ばれていた少年に告白をしようと決心をした。
だが、全く話せる機会は来なかった。というか、話しかける勇気が出なかったのだ。そして、彼は毎回ピザトーストを買う。彼の親は忙しいのだろうか。
*
須々木さんが朝の仕込み後に腰を痛めた日がある。その日は、パン屋を急遽臨時休業にした。俺はアルバイト生だが、パンを焼いたりトッピングを付けることしか出来ない。つまり、パンをつくる須々木さんが作れないのだから仕方がない。朝の分は早朝に仕込んでいたので大丈夫であったため、朝だけ空いていた。その為、俺は彼を見ることが出来た。
夕方、中学校の近くにある公園に足を踏み入れる。
俺は浪人生だ。だから、常に独学で写真を撮って美的センスを高めていかなければならない。最近は、夜にしか時間が取れていなかったため、夕方の写真を撮れることが嬉しかった。
「え?」
カメラをカバンから取り出そうとしたら、彼がいた。
彼は、ブランコに乗っていた。
ゴクリと唾を飲む。
これは、告白をするチャンスだ。
そう思った。
告白、した。
一度目は振られた。
でも、俺はめげない。
それからは、今まで彼にプレイベートなことを話すことがなかった俺も話すようになったし、彼のためにたまにピザトーストの具を多めに入れたりした。彼は俺と話す時に、笑顔を見せてくれるようになった。
そろそろ、もう一度告白をし直してもいいかもしれないと思った俺は、展示会会場で告白をすることに決めた。その時、たまたま俺が志望している美大の展示会があって、友人伝えで俺の写真を見た先生達が俺の作品を展示してくれることになっていたのだ。だから俺は、その作品に彼の写真を使うことにした。一番初めに君が俺がいるパン屋に来た日。初めてピザトーストに手をつけた日。君と俺が出会った日。
特別な写真。
告白は、成功した。
恋人同士になってからは何もかもが幸せだった。俺は彼を透君と呼び、透君は俺を若葉さんと呼んだ。
好きになればなるほど君とずっと一緒にいたいという気持ちが湧く。お互いの家にはいけなかったため、俺と透君は近くのホテルに行くこともしばしばあった。透君は男同士体を交えることに抵抗すらなく、というよりもむしろ慣れていた。初めての時は驚いたが、それでもいいと思った。
付き合って数年が経ち、透くんが中学三年生になる前、俺は美大へ行く学資金が貯まった。
これでやっと美大に行ける。
そう思った。
冬に受験をしてみたら、一発合格だった。
さて、問題になったことがある。
俺はその受験で顔見知りの奴が出来たしまったのだ。
「あ! 試験で消しゴム貸してくれた人じゃん!」
合格発表者の数字が書いてある掲示板の前で、俺はそいつと再開した。はっきり言って、俺の苦手なタイプだった。明るすぎるし、声がデカくて近くにいると耳が痛くなる。
「おう。良かったな。受かって。」
とりあえず、俺はそいつにそう言ってやった。
「アンタのおかげだよ!」
嬉しそうな顔を見せてくるそいつ。
なんというか、コイツは俺よりもデカくて細いくせに筋肉質だ。
ちょっとチャラ男に見えるが、体育会系なのかもしれない。
「なあなあ、俺とアンタぜってーいい友達になれると思うんだ!! よろしく!」
目を輝かせながら握手を求めるそいつ。
「あ、ああ。まあ、よろしく。」
友達になる前提かよ……
「そうだ! 名前をまだ言ってなかったよな? 俺は松潟 遥(まつかた はるか)って言うんだ。浪人したから、アンタより年上かもな!」
「俺も浪人生だ。俺は松岡 若葉。遥って女の子みたいな名前だな。」
「そうなんだよ! 親が焦って女の子だと勘違いしたままその名前で市役所に出してしまったらしくってな。だから、いじめられねーように鍛えてんだ!」
なるほど。
少しばかり雑談をしたあと、俺たちはすぐ帰った。だが、その後も入学前にちょくちょく遊んだし、それなりに親しくなった。
その度に、透君と会う日が少なくなる。
そして、序々に思い始めるのだ。
透君と付き合っていることを、松潟に知られたくないと。
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