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卒業式が終わる
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『卒業生が退場します。皆さん大きな拍手で―――』
お粗末なアナウンスと拍手に見送られながら僕たち卒業生は花のアーチをくぐる。
背後で一気にざわめき始めた下級生たちにこの学園を託した。
教室へ移動しありきたりなことを担任教師が暑苦しく泣きながら語り、それが終わると本格的に学園生活が終わる。
卒業式を終えた3年生は、友人同士で記念撮影にいそしみ、悲しみのあまり泣き出した少女達はお互いの身を抱きしめあい、仲が良かった男子たちは涙と涙で語り合う。
僕のもとにも何人かのクラスメイトが来てくれたが、僕は泣かなかった。
そんな普通すぎる光景になじめない。
彼らは皆幸せそうだ。泣いているけども笑っている。
今日という良き日を記憶に刻みつけるために泣き笑い悲しみ喜び分かち合い思う存分に青春を謳歌する。
今更そんな事をして何があるっていうんだ。
僕は笑えないし喜べないし分かち合う人もいない。
孤独だ。
やがてまばらに人は散っていきいつしか僕一人を残して人気をなくす。
夕暮れに染め上げられた校舎を見上げ、僕はゆっくり頷いた。
さあ行こう。思い出集めの旅へ。
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