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病院へ着き、病室まで岬の手を引いて歩いた
病室の前に立ち、岬の背中を押した
「大丈夫だよ。俺はここで待ってるから…行っておいで」
「でも…」
「俺がいない方が話しやすいだろ。気にしなくていいから。ほら、岬が来るのを待ってるんだから…」
そう言って、近くにあったベンチに腰掛けた
不安そうに見つめる岬に笑みで応えた
手を掲げ、指輪をそっと撫でて見せると、岬も自分の指の指輪を撫でて決心したようにはっと息を吐き病室の扉をノックした
岬が病室に入って、1時間経った頃岬のお母さんが出てきた
「この度はありがとうございました」
「いいえ…」
立ち上がり頭を下げた
「ごめんなさいね…我儘ばかりで。お父さんも峠を越えたって」
「いえ、俺は全然…」
「あのね…お父さんが退院するまででいいの…岬を…」
「…それは…本人が良いなら…」
「久し振りに岬に会って、お父さんが凄く嬉しそうでね。あの子意固地になって帰ってこないし…突然帰ってきたと思っても、連絡一つ寄越さないし…心配してたのよ。私は貴方から話は聞いてたから」
「そうですね」
「それでね…しばらくの間でいいの。家族の時間貰えないかしら。私達もちゃんと岬と向き合って話してお互いが納得出来る形で仲直りしたいの…こんな事言ったらあれだけど、未だにどうして相手が貴方なのか…」
「…っ、それは」
「責めるつもりはないのよ。あの子とても幸せそうだし。これで良かったのかもと思うところもあるのよ。無理矢理引き離しても、離れる事がなかったんだもの。それだけお互いを必要としてるって事でしょ?」
「ええ、岬が居ないと、俺は俺じゃなくなる…岬が居て初めて俺と言う人間が生かされる…」
「岬も同じような事を言っていたわ」
そう聞いて、単純に嬉しかった
「岬を家に帰してもらえないかしら」
「お父さんの事もありますから、それが一番だと思います…でも」
「ずっと帰さないって訳じゃないのよ。それだけは分かって…親子で過ごす時間を分けてもらえないかしら。今は無理でも、そこに貴方を呼んで話もしたいと思うの」
「分かりました…岬には?」
「それとなく話したんだけど、貴方からも言ってくれないかしら」
「分かりました…話してみます。あれで結構強情ですから(笑)少し時間掛かるかもしれませんが…」
「ありがとう」
お母さんは、そう言って病室へ戻っていった
言われるだろうと思っていた事を言われ、頭の中でシミュレーションしてたけど、いざ言われると言葉が出てこなかった
でも、岬の家族との和解は俺が望んでいる事でもある
岬に会えないのは寂しいけど…
これも致し方ないのかもしれない
家族が蟠りを抱いたままってのも、あれだし
俺の話をすんなり聞いてくれるだろうか
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