アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
怪我
-
気力で走り味方に追いつく。今ボールは僕達のチームが所持していて、ゴール下まで攻め込んでいた。
とても大きなチャンスだ。
味方がゴールしようとするが大きな奴が邪魔をしている。
丁度エセ爽やかもマークにがっしり行動を抑えられていてパスコースがない。
他の連中も同じく。
ここだ!
僕は一瞬の隙をついてクソチビから逃げてパスを受け取る。
この距離ならさっき練習したし入る!
そう確信して、教えられた通りにフォームを作り、想像通りにボールは僕の手から離れた──
「だめーーっ!!」
それと同時に襲いかかる衝撃。
ガツッと大きな音がして僕の視界はぐにゃりと曲がり、そして全身を床に打ち付けていた。
受身を取れなかった僕に追い打ちをかけるように、上に覆いかぶさりぶつかってきた奴も倒れ込み、僕には二重の重みがかかっていた。
衝撃が強く、痛みどころじゃない。
ぐわんぐわんと目が回り、脳みそが片寄ったような感じがする。気持ち悪くて、目を開けられない。
全身が熱く人が歩く小さな衝撃さえ捉えて身体の中を響いていく。
「ごめんなさ─じょう──どうし─」
耳に入るざわめきが遠くなり、ピィーと耳鳴りがして、甲高い声が頭に木霊する。
動けずにいた僕を誰かが揺すってくるが、それでますます意識が遠のいた。
「泪!」
意識を手放す寸前に聞こえたのは、切羽詰った一番嫌いな声だった。
──────────
──────
「──で───だ」
「分かって──」
かすれていた意識が、その二つの声で覚醒してゆく。
段々と手足の感覚を取り戻し、匂いを感じ音を捉える。
そして、ゆっくりと重たい瞼を持ち上げた。
「………。」
白い…天井。
布団に…消毒液の匂い。臭い…。
「ぅ…ぐ…」
身体を起こそうとしたけど、頭がグラついて気持ち悪さに動けなかった。
全身も痛むし、右足の指も痛い。
「泪?大丈夫か?」
真横から声がする…そう思い、眉間にシワを寄せたまま顔だけをそっちに向ける。
あれ…どうして?
「何が起こったか覚えてるか?」
僕が間抜けな顔をしていたからだろう、その人物は心配そうに僕のおデコに触れる。
いや…間抜けな顔もするよ、きっと誰でも。
気がついたら保健室で、隣にはあの有名な斎之内遥海先輩が座っていたんだから。
しかも泪って呼んで僕を見つめてるんだ。
わぁ…イケメン。
先輩はおデコから頭に手を移動させ、優しく撫でてくれる。
男らしく角張っているのに細長い綺麗な指が、優しく僕の髪をすく。暖かくて心地よくて、ついその手に甘えてしまう。
自分から擦り寄ると、先輩は驚いた顔をした。
「覚えてないのか?」
「ふぇ…?何をですか?」
「あちゃー、ちょっと記憶が混乱しちゃってるね」
遥海先輩の横に歩いてきたのは保健室の武田先生。
朗らかな優しい先生はみんなをいつも癒してくれる。
でも先生はちょっと困った顔つきで、うーんと顎に手を当てた。
「あのね、泪くんはバスケットの試合で選手とぶつかって軽い脳しんとうを起こしちゃったんだ。それでここにいる遥海くんがここまで連れてきてくれたんだけど…どう?記憶にある?」
「……んー?」
「なんか、右足も誰かに踏まれたのか血が出てるし、他にも青アザもあるし…結構激しい試合をしてたんだよ?」
バスケの…試合……。脳しんとう。
だからこんなに痛くて身体が重いのか。
バスケ、確かにやってた気がする。
あれ?僕…遥海先輩とも話したことある…気がする。
「そんな気はするんですけど…」
「困ったなぁ。多分、1日2日で治ると思うんだけど…」
「とりあえず、俺が気にかけときます」
「そうしてあげてくれるか?担任の先生には俺から言っておくよ」
僕の上で織り成される会話に、ポカンとしてしまう。
だって、あの遥海先輩が僕を気にかけてくれるって…やば過ぎでしょ!!
どんだけいい人なんだろう。神に選ばれた人は、容姿も性格も恵まれるのかな。
「泪、起きられるか?」
「だ、大丈夫です!」
イケメンに心配されるなら、怪我してもいいかもーなんちゃって。
ダメダメ、僕には勇くんという想い人がいるんだから…。
ベットから起き上がり靴を履くと、先輩は僕の前に背中を向けて膝を付いた。
これはまさか!
「部屋まで送るから乗って」
「あ、ありがとうございます」
おんぶ!!ちょっと恥ずかしいけどこの機会を逃したら2度と乗れなさそうだから、乗っちゃいます。
でもこんな姿見られたら目立つ…けど、いいよね。
恐る恐るその背中におぶさると、遥海先輩は軽々と立ち上がり保健室を後にした。
先輩は着痩せするタイプみたいで、掴んだ肩も触れている背中もしなやかな筋肉の感触がする。この勢いなら絶対腹筋も割れてそう。
「重くないですか?」
「全然。むしろ軽い」
むふふー。まぁ軽いよね。標準体重より少ないし。
それよりも、身長高い人の視線ってこんな高いんだ。なんか、偉くなった気分。
ちょっと楽しくなって、先輩の背中で伸びをすると、先輩に小さく笑われた。
「何やってるんだ?」
「えーと…身長が高くなったらこんな感じかなぁって…」
「フッ。可愛い考え」
「えっ……」
は、恥ずかしい…。
子供っぽいってことだろ?うわぁ。恥ずっ。
その後寮に着くまで僕は大人しく肩に顔を埋めていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
12 / 123