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敦ともう1人
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リビングのソファーに寝転びながら、つまらないテレビをなんとなく眺めていた。
何もする気力が起きずただ時間を無駄にしている。
体調は問題ないけど、バスケでチビとぶつかりあったりしたせいで身体中が痛む。だから動きたくない。
その結果が今だ。
「はぁつまらん」
「暇人」
「病人だ」
「勉強でもしろよ」
「気分じゃない」
机の上に広げていたスナック菓子を摘もうと手を伸ばしたけど、伸ばした先には何も無かった。テレビに向けていた視線を横にずらすと、デカいあいつが僕のスナック菓子を独り占めしていた。
「なに勝手に食べてんの」
「別にいいだろ」
「金払え」
「無理」
「じゃあ返せ」
ふん、と手を伸ばして返せとアピールするけど奴はお構い無しにモグモグとスナック菓子を口に放り込んでいく。
「モデルのくせに、お菓子なんか食ってていいのかよ」
「お前こそ、デブになるぞ」
「うわ最低!乙女に向かってデブは禁句なんだぞ!」
「乙女なんてどこにいる。見当たらねぇな」
奴はわざとらしく首を傾げまた一つお菓子を口に放り込んだ。
その態度と顔にムカッとくる。
お前に言われなくてもデブらないように気をつけてるに決まってんだろ。
乙女の覚悟舐めんな。
ムカついた勢いで新しいお菓子に手をつけようかと思った時、ピーンポーンと誰かがチャイムを鳴らした。
誰か来た、なんて呑気に考えていたけど、ふと気がつく。
ここはもともと斎ノ内 遥海の一人部屋だった。つまり、ここに来る人間は斎ノ内 遥海に会いに来た奴で、そしてそいつは僕がこの部屋に越してきたことも知らないし、誰かいるとも思ってないだろう。
つまりつまり、バレたら色々都合が悪い…。
「ちょっ!ちょっと待て!」
扉を開けに行ったソイツの腕を引いて、なんとか開けさせないように阻止する。
「何焦ってんの?」
「いや、まずいだろ!僕がこの部屋にいるってバレるのはまずい!開けるな!」
「あーまぁそこは大丈夫だ」
「全然大丈夫じゃない!」
焦る僕とは対照的に奴は随分と落ち着いている。
バレて困るのはこいつも一緒のはずなのに。
止めようとする僕ごと引きずって玄関の鍵に手をかける。
「マジでやめろ!」
「大丈夫。コレ、お前に会いに来た奴らだから」
「…は?」
奴の言っている言葉の意味が理解出来ず力が抜けた隙をつかれて、ガチャっと軽々しく開いた扉の向こうにいたのは……
「泪~元気か?」
現在の最悪な状況を生み出した敦と
「こ、こここ、こんばんわ…」
げ……。
僕の嫌いな柚瑠が立っていた。
敦はともかくどうして柚瑠までいる?しかも、緊張してるけど斎ノ内遥海がいることに驚いていない。
これはまさか、2人を呼んだのは僕の目の前で爽やかな笑顔を浮かべている腹黒野郎か?
「2人ともとりあえず上がって?」
僕の視線を無視して2人を招き入れる。柚瑠がいる手前僕もこいつも下手な言動は出来ない。
それを知っているからか、アイツは何だか余裕そうに見える。
「お邪魔します」
「お、お邪魔します…」
2人を先に中にいれて、その背後で奴の腕を抓る。
(どういうことだ?)
(別に。敦が部屋に来たいって言うから入れた)
(なんで柚瑠がいるんだよ)
(それは俺じゃなくて敦に聞けよ。それに…天野と親友なんだろからいいだろ)
ニヤリと嫌味な笑顔でそう言い放ち、クルッと表向きモードに入ったアイツ。
なんだよ…そんなことまで知ってんのかよ…。敦が変なこと言ったに決まってんだよ。
親友…ねぇ。
ソファーに腰掛ける柚瑠を眺める目が冷たくなる。
あんな奴…。
「初めまして、斎ノ内遥海って言います。君の名前は?」
「あ、あ、天野柚瑠です!宜しくお願いします」
「そんな畏まらないで大丈夫だよ」
顔を赤らめカチコチになっている柚瑠と、その横で斎ノ内遥海を睨む敦。
柚瑠が斎ノ内遥海に惚れてしまわないか心配してるんだろう。そんな心配するぐらいなら連れてこなければよかったのに。
「今日はどうしたの?」
「泪のお見舞いに来ました」
奴は2人に麦茶を出して、僕が座っている柚瑠と敦の向かいのソファーに腰掛けた。つまり僕の隣。しかもやたら距離が近い。
こいつキモッ!
「泪、大丈夫?」
さり気なく離れようとした僕に、不意打ちで柚瑠が声をかけてくる。
それに対して、いつもの様に笑顔で対応。
「全然大丈夫だよ。明日から学校いけると思う」
「よかった!」
僕に向けられた笑顔は本物の笑顔で、それはそれは綺麗だった。
裏も表も無い本心から僕を心配して安堵した柚瑠。
本当に嫌い。僕の気も知らないで。
もうさっさと帰って欲しいぐらいだ。
内心そう思いながらも、柚瑠が振ってくる学校の話に笑顔で答える僕。
その隣で僕達2人の会話を聞きながら、チラっと斎ノ内遥海とアイコンタクトをしていた敦を見逃さなかった。
「いやぁ泪が元気そうでよかったわ。凄い噂になっててさ、みんな心配してたんだぜ?」
アイコンタクトの後わざとらしく咳をした敦が、なんだか違和感満載のセリフを言って僕の方を見た。
…こいつ何企んでんだ?
こんなセリフに騙されるやつなんか「そうそう!噂だらけになってたんだよ!泪が記憶喪失になったとか骨折したとか!」
…騙される奴が約1名いたの忘れてた。
こんのオトボケ野郎!そこは何か変だなって思えよ!勘づけよ!
「あはは…そうだったんだ…」
記憶喪失はあながち嘘じゃなかったけど…まぁそこは触れないでおこう。
「でも、泪が倒れた噂と同じぐらい広まってる噂があるんだよ」
「ふぇっ!あ、敦!それは言わない方がいいよ!」
敦が読んでいくセリフで次に何を言うか勘づいた(ここで勘づくのかよ!)柚瑠が、止めるために敦の腕をぎゅっと握った。
その瞬間分かりやすく、ビクッと敦の身体が跳ねて頬が真っ赤に染まった…リンゴ…いや、辛子明太子みたいに。
敦を無意識に上目遣いで見つめる柚瑠を見て、鼻の下が伸びるバカ。
きっと内心、柚瑠可愛すぎるだろ!!、とか言って悶えてるんだぜ。
いっそそのまま部屋に連れ帰れ。そしてベットinしてしまえ。
「凄い広まってる噂って何かな?気になるなぁ」
敦が赤面して止まっていると、まるで「早く言えよ」と言わんばかりの笑顔を向け、足を組んだ隣のヤツ。
その真っ黒い笑顔にサッと姿勢を正した敦が、また咳払いをして「大丈夫だよ」とかなんとか柚瑠に耳打ちしていた。
いや、マジでお前ら何企んでんの?全然大丈夫そうじゃないんですけど。
僕は敦に「言うな」という想いを込めて笑顔で睨むが、多分僕より隣のモデル野郎の方が怖かったんだろう、息を吸って僕とは目を合わせずに言った。
……とんでもない問題発言を。
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