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いい反応だ─遥海side
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───遥海side
『今日、天野を連れて部屋に来い』
泪が俺の部屋で大人しく眠り始めてから、敦にメッセージを送った。
その目的は2つ。
1つ目は敦に天野との仲を協力すると言ったため。
2つ目は利用するため。
俺と泪のことで、敦と天野が秘密を共有すれば距離が縮まるだろう。そして、その秘密を知っている2人を俺に協力させる。
一石二鳥だ。利用するにはもってこいの人材。
特に天野 柚瑠。敦の話だと泪の表上、親友の位置にいて、『勇くん』が狙っている奴らしい。いやぁ、面白過ぎる。
これだけでも充分な三角関係なのに、そこに敦と俺が加わるんだから、結構な昼ドラが完成するな。
泪を落とすのはかなり困難だ。押しても引いても今の所あまり効果は無いように見える。
まずは外堀を埋めて泪の逃げ場を断つ。じわじわと攻めてやらないとな。
しばらくして、敦から返信が返ってきた。
『それは柚瑠に、泪と先輩が同室になったことを言ってもいいってことですよね?』
『口止めはしておけ』
『了解でーす。あ、あと遥海先輩には嬉しい噂が流れてますよ』
そのメッセージを読んで思わず笑みが零れた。
知ってるよ、そんなこと。
『遥海先輩と泪が付き合ってるんじゃないかって噂が学校中に』
計算通りだ。体育の時間にあれだけアピールすれば、そうなる。
泪が倒れるっていうのは想定外だったけど、それが決定的だったのかもな。わざと目立つ様にお姫様抱っこをしたんだから。
『それ、部屋に来た時泪に話してくれ』
『分かりましたけど…何企んでるんですか?』
『秘密』
企んでるとも。けど、言わない。俺の予想通り泪が動くとも限らないからな。
それに敦は馬鹿そうだから、言ったら言ったでヘマやらかしそうだし。
「楽しみだ」
携帯を置いて、そっと自室の扉を開けた。
スヤスヤと眠る泪の髪をそっと撫でてみる。柔らかく艶のある髪の感触。こういう所に気を使ってる腹黒天使は女子顔負けの女子力の高さだ。
「ん…」
少し眉間にシワを寄せ、唸ったコイツから手を離し、部屋を出ようとして気がついた机の上。
ペンケースがひっくり返っており、中身のペンが散乱していた。
「ぷ…馬鹿っぽい」
そんな小さな嫌がらせに自然と口角が上がっていた。
ペンをペンケースにしまい、俺は部屋を後にした。
*****
それからしばらくして、敦が柚瑠を連れて来た。
部屋に敦と天野が来た瞬間にオーラが真黒に染まった泪を他所に、2人をソファーに座らせた。
天野がいる手前、泪は表向きの顔で大人しく座っている。
そして泪と天野が他愛も無い学校の話をしている中で、そろそろかと思い敦に目配せをする。ほんの一瞬で、普通なら気が付かないソレだが俺の隣で警戒心MAXにしている奴にはお見通しだったようだ。
いや…目配せに気が付かなくても次の敦の言葉を聞いたら誰でも何か勘付くだろう。
何故かって?それは…
「いやぁ泪が元気そうでよかったわ。凄い噂になっててさ、みんな心配してたんだぜ?」
敦のセリフが酷すぎたからだ。
言っている内容はいい。だが、話し方に抑揚がないというか、わざとらしい。小学生の発表会じゃないんだからもう少しナチュラルに喋れなかったのだろうか。
話し出す前の咳だって変以外の何物でもない。
ここまで酷いとは想定外だった…。
これじゃあ天野だって怪し「そうそう!噂だらけになってたんだよ!泪が記憶喪失になったとか骨折したとか!」
…なるほど。天然か。これが天然の実力か。
一点の曇もないような瞳で話に乗る天野を見ると、確かにこの顔でこの性格ならモテまくってることに、そしてまだ誰の物にもなっていないことに納得がいく。
流石の泪もこの天然ぶりに得意の笑顔が少し崩れている。
「でも、泪が倒れた噂と同じぐらい広まってる噂があるんだよ」
「ふぇっ!あ、敦!それは言わない方がいいよ!」
敦のお遊戯会が最終局面に向かおうとした時、天野がその天然ぶりをまたもや発揮する。
天野は敦の腕を掴み、上目遣いで見つめあげた。その効果は絶大で、敦の顔は真っ赤に爆発。
天然は天然でタチが悪い、なんて思って観察してたけど、このままじゃ敦の鼻の下が伸びっぱなしで先に進まない。
「凄い広まってる噂って何かな?気になるなぁ」
脚をわざと組み、笑顔で敦に視線を投げた。もちろん最速の意を込めて。
そしてその後は俺の予想通りスムーズに進んだ。俺が泪を煽ったせいもあるけど。
敦が俺と泪が付き合っている噂があると泪に伝え、それを聞いた泪が天野の前でもお構い無しにブチ切れて、部屋に引きこもった。
嵐の後のような静けさがリビングに広がった。
俺も敦も、裏の泪を知っていたから別にどうってことない。だが、唯一何も知らない天然天野はポカンとしている。
一体何が起こったのか、今怒鳴ったのは本当に泪なのか──そんなことを考えているんだろう。
「え……と…その…」
敦が何か言おうとして口ごもる。多分泪のフォローをしようとしたけど何を言えばいいか分からないと言ったところか。
とりあえずお前は黙ってろ。碌でもないことしか言わなそうだし。
泪のフォローは俺がする。と、いうよりかこのド天然に色々吹き込んでおくか。かなり利用しやすそうだ。
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