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温もり
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「ヒック…ん…ふぐ…」
零れ落ちる涙はアイツのシャツにシミを作っていく。いくつもいくつも重なって、丸い模様を描いていく。
どうして自分は泣いているのだろう。
あの時は泣けなかったのに、どうして?
その答えを、今探そうかとも思った。だけどやめた。
怖かったから。答えを知るのが怖かったから。その答えを受け止めることができる自信がなかったから。
だから、弱い僕はアイツに甘えてしまう。
自分の意志であって、自分の意志ではない何かに頼って、震える手でアイツの背中に腕を回した。
そうすれば、ぎゅっとさらに強く抱きしめられアイツが小さく笑う。
「好きだよ」
「........。」
「好き」
「........。」
心地よくじわじわとしみ込んでくる声。温もり。
この腕の中はこんなにも暖かかったのか。
「今すぐ答えを出さなくていい」
yesともNoとも言えない僕を腕に抱いたまま、アイツは静かに呟いた。
「ゆっくりでいいから、俺のこと考えて欲しい。アイツじゃなくて…俺のことを見て欲しい」
僕は何も言ってないのに、アイツはちょっぴり嬉しそうなのはどうしてだろう。
分かんないけど…でも……。
考えることを放棄して、ただここにあるモノに委ねてみたら...。
「俺と付き合ってください」
今ここにある確かな存在に、1度全てを委ねたら、何か変わるだろうか…。
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