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小さな嫉妬─遥海side
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「せ、狭いから!」
俺の胸を押す手はただの形式。
抵抗しているという形だけ。
本気で嫌がっているわけではないけど、認めたくない。そんな泪のツンな部分が現れている。
素直じゃない泪だからこそ、弄りがいがある。
「何でゼリー食ったの?」
さらに身体を詰めて泪の頬にかかった髪を耳にかけてやる。
きょろきょろ不自然に泳ぐ目を覗き込み答えを促すと、唇がピクピクひく付きだした。
分かりやすい反応...。
必死に考えているであろう言い訳を待ってやったけど
「…食べたかったから!」
やけくそのように叫ばれてクスリと笑みが零れた。
お前のそういう変に頭が弱いところ、可愛い。
「嘘つき」
まぁ、見逃しはしないけど。
「や...」
ぷにぷにほんのり熱い頬をつつくと顔を逆側に反らされ、現れたうなじが色っぽくちゅっと唇を寄せれば官能的な声が俺を刺激する。
「嫉妬しただろ?」
滑らかな肌に唇を触れさせたまま吐息交じりに囁くと、泪はビクッと身体を震わせ弱弱しく胸を叩いてきた。
「違うっ!絶対違う!」
「へぇ。なら、あの番号に連絡してもいいってこと?」
「あ...破いて捨てたんだから無理だろ!」
一瞬目を見開いたがすぐにまた睨まれた。
こうなったら嫉妬したことを認めさせたい。泪の気持ちを確かめたい。
そんな欲に駆られて、連絡する気もないし泪の言う通り破いて捨ててしまい番号なんか分からないけど、さも知っているようかのように振るまってみる。
壁からゆっくりと腕を下ろし携帯を手に取るため離れようとした。
けれど、それは泪の手によって阻止される。
「バカ!ぅ...バカ遥海!」
胸を叩いていた手が俺の服をぎゅっと握りしめ、きつかった表情は一転していた。
眉尻は下がり、口が一文字に結ばれ大きな目は歪み揺れていた。
俺の心臓を一突きにするぐらい切なげな表情。
「連絡すんなっ!!」
「......。」
「ダメなものはダメ!!」
あぁ...やばい。
今すぐ強く抱きしめてその唇を奪ってしまいたい。
「なんで?」
「ぅ...」
「お願い、言って?」
泪の瞳を見つめて、俺は懇願していた。
聞きたい。言ってほしい。
俺の気持ちを押し付けて今の関係になったようなものだから、心のどこかでは不安を感じていた。
この関係を恋人と呼んでいいのか。
泪の本当の気持ちがどこにあるのか。
誤魔化すみたいに身体を求めて、ここ数日は泪に負担ばかりかけてしまった。
今更手放せないから...。泪に好かれているという自信が欲しい。
とんでもない乙女思想に昔の俺ならドン引きだろう。
だけど、今の俺は違う。
一度受け入れてもらえたら、眺めているだけでは満足できない。一方通行では我慢できない。
自分でも知らなかった欲望。
きっとこういう感情は重たいだろう。
誰にも言えない、見せられない。泪には特に。
悟られないために余裕ぶって年上ぶって上からモノを言って...だっさいよな。
余裕もなければ器も小さい。
だから確かめたい。
その愛しい声で、伝えてほしい。
「泪...」
胸にある手を上から優しく包むと、泪はぐっと力を込めて俺のことを引き寄せた。
「お前はっ...堂々と浮気する気かっ!!」
怒りと悲しみが渦巻き潤んでいる瞳が綺麗で、それでいて堪らない。
「僕と付き合ってるんだろ!?」
震えそうな声を大声で誤魔化し、俺にぶつけてくる。
「あんだけ好きって言ったくせに!!エッチしたかっただけかよ!!」
滅多に聞けないであろう泪の本心。
俺が聞きたかった言葉達。
あぁ...なんていうか......
「ちゃんと傍にいて看病しろよ!バカ!あほ!!」
ホント好きだわ...。
「泪、ありがと」
やっと背中に回すことができた腕で強く、壊さないように抱きしめた。
好きだと、愛おしいと、全身で伝わればいいのにな。
「可愛い...好きだよ」
「ばか!」
ぐすぐす鼻をすする泪の頭を撫でつけながら伝えれば、好きの代わりが返ってくる。
そして泪の腕が俺の背中に回されて、しがみつくように顔を押し付けられた。
泪のためなら何でもできる...なんて本気で思った。
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