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泪の隣─遥海side
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──遥海side
『今日は咲達と遊びに行くから、僕の分の晩ご飯は用意しなくていいから』
HRの時間に泪から送られてきたメッセージ。
滅多に連絡してこないから、変に期待して開いたらコレだ。
今朝の一年のことでモヤモヤしているこっちの身にもなってみろ、馬鹿泪。
「はぁーあ」
「振られた??どーんまい」
「あ?違うから」
「相手にされないからって怒らない怒らない~」
掃除のほうきを片手に俺を煽ってくるのは勿論幸太。
つーか、俺に対してこんなこと言ってくんのは幸太ぐらいなもんだ。
「可哀想な遥海くんは俺たちと鍋パーティーでもしますか」
雑に床を掃きながら、幸太はニッコリ笑顔を作る。
「鍋?」
「そ!もう達也に準備させてるからすぐできる」
「…タダ飯なら行く」
「うわ…優男の欠片も見当たらない…」
ボヤく幸太から視線を外し壁に背を預け、ふと窓の外を眺める。
すると、見知った姿を見つけてバッと窓に張り付いた。
「アイツ…」
男にしては小柄で華奢な体型、色白の肌。フワフワとした触り心地の良さそうなミルクティー色の髪が風になびく。
この距離でも見間違わない。
間違いなく泪だ。
それだけだったら別にいい。アイツが出かけることはちゃんと連絡されたから。
だけど泪の隣を陣取り、近すぎる距離感で歩く男が泪の片想いだった相手の菊池勇だったなら話は別だ。
俺が一番気に食わない男がいるとか聞いてない。
2人の後ろにも小さい中学生のような男と体型のガッチリした男がいて、時折泪もそいつらと話しているから一緒に行動しているみたいで2人っきりじゃないだけまだマシだ。
けどどうして今更アイツが出てくる?
アイツは天野柚瑠とくっついたはずだろ?
自然と冷たくなる視線。
窓をなぐたくなるほど、俺の心情は大荒れだ。
「あれあれ〜?」
そして、俺が大荒れであることを察しながらわざわざ近寄ってくるコイツ。
「あれは愛しの泪くんだよね??」
ふふん、と鼻で笑い俺の顔を覗き込んでくる幸太が心底ウザイ。
この時ばかりは友達になるべき相手を間違ったと本気で思った。
「そして隣を歩くイケメンくん…。あれは俗に言う浮気現場ってやつですかねぇ〜」
「…違う。そんなんじゃない」
外から幸太に視線を逃がす。
いつまでも見たくない風景から目をそらしたことさえ幸太は分かっているのかもしれない。
「強がっちゃって。かーわいい遥海くん〜」
強がり。
その通りだ。
泪は俺と付き合っているから。ただ遊びに行くだけだ。
そうやって自分に言い聞かせて今すぐ追いかけたい衝動を必死に抑え込むことしか出来ない。
「ほーら、遥海〜。いつまでも突っ立ってないで行くよ。慰めてあげるから」
いつの間にか掃除を終えた幸太がニヤニヤした顔のまま俺を手招きする。
重たい気持ちを抱えたまま、泪の帰りを待つことしか出来ない現状がもどかしい。
「あぁ…行くよ」
鍋で気を紛らわせることしか出来ない自分が情けない。
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