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近い
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──彼の本当の心はどこにあるの?
遥海に連絡を取るというミッションを終えた僕は咲と勇くんといざ出かけようと玄関を出た。
しかし、てっきり3人だと思っていた僕の前に立ちふさがった大きな身体。
……え、誰?
「前田も誘ったんだ!」
勇くんの紹介によれば、前田くんはサッカー部所属の人だった。
僕とは全く面識がない。
けれど、咲は1年生の頃同じクラスだったようで打ち解けた雰囲気で話している。
ええ…この人もいるの…。
初見の人と遊ぶのは結構キツイものがあるんだけど。
いきなり現れた前田くんとの会話を避けていると、いつの間にか僕の隣には勇くん、咲の隣に前田くんが並びに、道幅が狭いことから二列になって歩いていた。
必然的に僕の話し相手は隣にいる勇くんになってしまった。
ちらっと隣を伺うと勇くんがニコッと爽やかに笑う。
僕もその笑顔にぎこちなく応えるけど…か、会話がっ…会話が欲しいぃぃ!
歩きながら微笑み合うだけって変だから!
必死に探した話題は皮肉なことに柚瑠のことしか見つからなくて、意を決して持ち出した。
「い、勇くんは…」
「なーに?」
「柚瑠と付き合ってるよね?」
「…うん、そうだね。付き合ってるよ」
えーとこの次何聞こうっ!?
「それがどうしたの?」
「っ!」
アワアワ次の問を考えていた僕の隙を付くかのように、勇くんはグッと距離を縮めてきた。
肩と肩が触れ合う距離感は明らかに近過ぎる。
それにビックリして離れようとしたけど僕の逆の隣は壁で逃げ場はなかった。
絶対近いっ!近いってば!勇くん気がついてる!?
至近距離にイケメン爽やかフェイスがあり、更に慌てる僕とは対照的に勇くんは「泪?」と首を傾げている。
最近の人類は天然が主流なのかっ!?
じゃあ何故僕は天然に生まれなかったんだ…なんて思考が脱線仕掛けたが、ポンと次の問が思い浮かび急いで述べた。
「せっかくのお休みだったのに、僕達と遊んでていいの??」
「どうして?」
「だって、貴重な時間を恋人と過ごしたいとか思うでしょ?柚瑠も何か言ってこなかったの?」
僕の中では当然で常識的な認識だった。
勇くんみたいに忙しい人は恋人との時間が少ないから、こういった休みは恋人と過ごして恋人に尽くすものだと。
僕は……別に…同じ部屋だし…。
って僕の事じゃなくて、勇くんと柚瑠のこと!
そう思って尋ねたのに勇くんはちょっと不思議そうな表情を浮かべた。
「んー…俺は泪と過ごしたかったから今ここにいるんだけど…。それに俺、束縛とか嫌いだからなぁ。柚瑠も何も言ってこなかったし、全然平気だぜ」
ここで初めて、勇くんの考えが僕と違うことに気がついた。
というか、これが世でいう女と男の温度差ってやつ…?
男の人は恋人がいても友達を優先したり結構自由な考えだけど、女の人は恋人と一緒にいたいとか束縛が強いとか……
僕って完全に女性思考…?そりゃ、”下”だから女の子みたいなもん…ではないから!!
アカンアカン、と変なことを考え出した頭を振り乱して僕を上から見下ろす遥海の顔を追い払う。
くそー!危険物質め!
なんとなく頬が熱くなった気がする。
「泪、大丈夫?」
「ぅ、うん!大丈夫だよぉ?あはは」
空笑いで誤魔化して無理やり適当な話題にすり替えた。
これ以上恋愛トークをすると色々ボロが出そうだったから。
目的地のカラオケにつくまで、勇くんとの会話は盛り上がった。
だけど、近過ぎる距離は変わらず、そして今まで僕が見てきた勇くんと少しだけ…ほんの少しだけ違うような気がした。
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