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「あ…の…泪?」
放心していた僕の背後から、咲の困惑した声がかかり我に返った。
咲は何とも言えない表情で僕を見つめる。
今さっきあったことについて、聞いていいのか悪いのか。でも心配してくれているのは伝わってくる。
「ごめん…大丈夫だからさ」
「うん……でも…」
うまく笑っているつもりなのに、咲は益々眉を下げてしまう。
ダメだな…咲に心配なんかかけたくないのに。
咲の顔を見ていられなくて、僕は1歩歩みを進める。
「本当に大丈夫だから、気にしないでい──」
「気にしないわけない、大丈夫なわけない。バレバレなんだよ、バカ泪」
一瞬咲に言われたのかと思ったが、次に暖かいモノに背中から包まれ鼻をかすめた香りに自然と肩の力が抜けていた。
「…バカじゃないし」
「バカだろ。昨日の今日でアレと話してんじゃねぇよ」
僕を背中から抱き締めて来た遥海は、さらにその腕を強めた。
あぁ…なんか、安心する。
心のモヤモヤが和らいでいく感覚に、身を委ねるように遥海の手を取った──が、
「こんな所で抱き合うなんてあっつあつ〜」
「こ、幸太!邪魔したらイケナイってば…」
「ハグだ!!」
すぐ近くにある存在にハッとして、遥海を押し退け素早く距離を取った。
ぼ、僕ってばっこんな玄関で何をしてんだ!?
バックンバックンと心臓が音を立て、顔にカッと赤が差した。
自分の置かれていた状況を理解し、羞恥心に苛まれ僕は頭を抱えてその場にしゃがみ込む。
「チッ…邪魔すんな」
「こらこら、皮をかぶれ。見られてるぞ」
くすくす笑いながら遥海を窘める彼を、遥海は睨みつけた。
そういえば…遥海が素で話してる。
たまに遥海と一緒にいるところを見る2人の先輩。
1人は遥海に劣らず背が高く見てくれがいい。
遥海を窘めた方は………うん。普通だ。平民感。
この2人は遥海の数少ない友達なんだろう。
そう思いながら見上げていたら、普通の方と目が合い彼が僕の目の前に近寄り同じようにしゃがみこんだ。
「初めまして、泪くん。俺は幸太って言って、遥海の大親友だから、よろしくね」
「あ?誰が大親友だ」
「え?俺と遥海」
「キモ」
遥海の辛辣な物言いなど諸共せず、幸太先輩は楽しそうに笑っている。
これがいつものやり取りなのだろうか。
「よろしくお願いします」
とりあえず小さくぺこりと頭を下げ、上目遣いで見つめてみる。
仮に遥海の親友だとしたら、気に入られておかないと!ここで嫌われたらおしまいだ。
いい子ぶるのは得意分野。こういうのは第一印象が大切なんだよ。
「えー超可愛いじゃん」
ほらほら、好調こうちょ「さっきとはまるで別人だね」
幸太先輩は遥海に向けたものと同じ微笑みを僕に対して浮かべそう述べた。
まるでわざと言っているかのような言い草。いや多分わざと言ってるんだろうけどさ…嫌味ってやつ?
僕があなたに受けた第一印象は最悪ですよ。
平凡の平凡の平凡の癖に…。
「えー?何のことですかぁ?」
こうなったら押し通してみせる。
僕はすっとぼけ、彼へにこやかに返す。
「だーかーらー、さっき大声出して睨みつけてたりしてたじゃん?」
「さっきのはちょっと気が動転しちゃったんですぅ」
「それにしちゃぁ様になってたよ?」
「あははは、やめてくださいよぉ。先輩?」
いつからか、笑顔のままお互いに火花を散らしながら言い合いをしていた。
傍から見たら穏やかに見えるかもしれないが、実際は真っ黒黒だ。
何コイツ…遥海の友達らしく腹黒じゃん…。
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