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雨の日の出会い
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朝から降り続いていた雨は止むことなく、放課後になった今は雨脚を強めている。
雨の日は嫌い。
何故って?そんなのセットした髪が湿気でヘナヘナになるのが嫌だから。
それに蒸し暑くなるし、窓から勇くんがサッカーをしている姿を眺められないじゃん。
かと言って休みではなく、中でトレーニングしてるから遊べるわけでもない。
雨ってホント使えない。
はぁと1つ溜息をついて、靴を履き替える。
靴紐を結んでいるように見せかけて、チラっと廊下を窺うと、勇くん達サッカー部がランニングをしていた。
大勢いるサッカー部員の中にいても一際輝き、目を引くのが勇くんである。
かっこいい!!
綺麗なフォームで走る勇くんにはまだ少し余裕がありそうで、そんな所もかっこいい要因の一つだと思う。
ほら、後ろからくる奴はゼェはぁ呼吸が乱れて顎上がっちゃってるし、ダラッダラに汗かいてるし…。
勇くんもそりゃあ汗かいてるけど…全然大丈夫!他の奴は近寄らないで欲しいけど、勇くんは汗すらかっこいいから!
内心1人で盛り上がり過ぎて、じっと見つめていたのだと気がついたと同時に、サッカー部マネージャーにキッと睨み付けられた。
うわっ…バレた...。
急いで立ち上がり、いそいそと傘置き場まで避難する。
そして、こっそりさっきのマネージャーを確認するともう他の仕事に取り掛かり僕の方は見ていなかった。
はぁ…びっくりした。
マネージャーにサッカー部を見ていたことはバレたけど、流石に勇くんを見ていたとまではバレないよね…?
一抹の不安を抱えつつ、いつまでもここにいて怪しまれたらたまったものじゃないと、自分の傘を探し始める。
傘…僕の傘…かさ…か…さ……。
「は?ない」
いくら探しても僕の青いチェックの傘が見当たらない。
間違えて1年生用や3年生用に入れたかと思い確認したけど、やっぱりない。
は?マジかよ…盗まれた…。
ふざけんなよ。どこの誰だ?あの傘高かったのに!
あーイラつく。こうなったら僕も盗んじゃおうかな…。
明日こっそり返しておけば問題ないでしょ。
そう安易に考えて、他人の傘を物色し手を伸ばしかけた時──
「ねぇ、もしかして傘ないの?」
「ひっ!」
僕の背後から、見知らぬ声がかかり小さく悲鳴を上げてしまった。
…まだ“ひ”でよかった。これが“うえ”とかだったら全然可愛くない。
僕は気を取り直して、可愛い自分に成り代わる。
少し怯えた風に振り返ると、そこに立っていたのは3年生の先輩だった。しかも…結構な…いや、とてつもなく有名人…。
斎之内 遥海(サイノウチ ハルカ)先輩。
読者モデルをやっている先輩だった。
身長は180cmオーバーで手足が常人と違いとても長くスラリとしている。
色素が薄く色白で、唇の赤が生え、瞳はキリッとした切れ長。目の色も茶色、髪も明るい茶髪で右耳にはピアスが光っている。
優しく気遣いも出来るthe優男で、イケメン枠なら一番人気かもしれない。
うわぁ…真近だとイケメンが際立つ。 流石モデル。
「あ!」
「はい?」
ちょこっとだけ見惚れていたら、遥海先輩は僕を見つめたまま声を上げた。
何事かと首を傾げると、遥海先輩は目尻を下げ優しげな笑みを浮かべた。
「俺、君のこと知ってる」
なるほど…。僕の顔をまじまじ見てるなぁと思ったら、思い出していたのか。
てか、僕のこと知らない人ってあんまいないんだけどね。
「泪くんでしょ?」
「ぁ、はい。そうです」
「やっぱり。噂通り可愛いね。俺は斎之内 遥海、知ってるかな?」
「もちろん知ってますよ。モデルの遥海先輩って2年生の間でも有名ですから」
サラッと可愛いって褒めてくる辺り手慣れてる気がする。
そもそも男相手に可愛いという言葉を褒め言葉として使ってくる時点で、そういう事だ。
まぁこの学校じゃ、ありえる話だ。しかもこんだけかっこよかったら、引く手数多だろうし、そういう技も自然に身に付くのか。
そう思いつつも、僕は上目遣いを忘れない。
いつ、いかなる時も可愛くあれ…。
これは僕の師匠のお言葉。
中学校の頃に出会ったある意味運命の人。
「わー嬉しいな。ところで、泪くん傘ないの?」
「はい…盗まれちゃったみたいで…」
ションボリした犬なように頭を垂れてみせた。
実際ショックよりも怒りの方が大きいけど…今は押さえ込んでおく。
だって、このままだと話の行き着く先は
「それなら、俺の傘に入って行かない?狭いかもしれないけど」
爽やかに微笑みながら、遥海先輩は右手に持っていた傘を持ち上げた。
ほら来た。相合傘のお誘い。
今すぐ飛びつきたい誘いだが、あえてワンテンポ挟んでおく。
「え!でも迷惑になりませんか?」
「全然。むしろ嬉しいぐらいだよ。泪くんと相合傘出来るなんて」
「ぇ…ぁ…ありがとうございます」
少し照れた風に俯き、お礼を口にする。
でも内心では苦笑いだ。
だって、このイケメンは常日頃からこんな調子なのだろうか?
それなら天然垂らし野郎じゃん。笑顔で、君と相合傘できるのが嬉しい…とか言われたらその気がなくてもキュンってなる。
正直ちょっとキュンってなったけど、案外褒め言葉とか、誘い文句の類は言われなれてるから、好きにはならない。
でも、天然じゃない垂らしくんなら…次のターゲットは僕…とか?
ありえなくもない話だ。
「泪くんは部活入ってないの?」
傘を広げた先輩は僕を振り返り聞いてくる。
「はい、何もしてません。そう言う先輩は?」
ちょこちょこと先輩の横に並び、傘に入れてもらう。
大きい黒い傘は僕が入ってもスペースには余裕がありそうだった。
しかし
「俺も入ってないんだよね。…泪くん、そんなに離れてたら濡れちゃうよ。もっとこっちにおいで」
「わっ!」
突然肩を抱かれ、先輩の方にグッと引き寄せられた。気がついた時には、既に先輩の胸に顔を埋めるような体制に…。
いやいやいやっ!?なに!?急に!?
確かに離れてたけど、こんな引き寄せる必要ある?ないよね?全然余裕だったよね!?
直ぐに離れようとしたが、肩を抱いている手にがっしりと抑えられ身動きが取れない。
ちょっ、ありえねぇ…
こんな所で盛るな!
すぐそこには玄関があって、その先には勇くんもいる。いつ、誰に見られてもおかしくない状況で、こんな恋人みたいなことするな!
先輩が玄関に背を向け僕がその胸に収まっている状態だから顔は見えないけど、それでも許せない。
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