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「二人三脚って、足縛らなきゃダメっすか?」
煌が近くにいた先生に聞いた。
…僕と、縛るの嫌なのかな…
「当たり前だろう。縛らなきゃ二人三脚にならんじゃないか」
「じゃあ、縛ってあれば良いんですね?」
「縛ってあれば問題ない」
よし、と煌は小さくガッツポーズをすると、僕と煌の足を緩めに縛った。
「零、多少恥ずかしいのに耐えれるか?」
「え…恥ずかしいの…?」
どういうこと?
二人三脚は本来恥ずかしいものでは無い。
「零、俺と向かい合わせになって、繋がってる方の足で俺の足踏んで」
「え?で、でも…」
「いいから、ほら」
両足で煌の足をそれぞれ踏む。
倒れそうになる体を煌が抱きしめて支えてくれた。
「煌、どうするの?」
「俺が走る、このまま」
そう言って、そのまま列に並んでしまった。
「僕、が…走るの遅いから…?」
「ん?」
下を向いた煌との顔の近さに驚く。
「違うよ、これだけ体格差があると転びやすいからな。零に擦り傷でも作ったら大変だ」
「…煌…」
「暑いかもしれないけど、俺にしがみついててくれるか?」
ぎゅうと抱きしめる。
「いくぞ、零」
「ん…」
顔を煌の胸板に押し付けた。
パンッと空気砲の音で煌の体がぐんっと前に飛び出した。
僕の体重も乗っているはずなのに…
…すごい脚力…
振り落とされないように、必死でしがみつく。
僕の体重も、邪魔な足も、まるでないみたいに進んでいく。
こんなにも早く動いてるの、初めて…
あっという間にゴールまで到達した。
「ふう…いつもより力は抜いたんだけど、大丈夫だったか?零」
ダントツトップ。
皆が煌の力を借りたいという理由がよくわかった。
「煌…すごいね、足早い…」
「俺、馬鹿だから運動くらいできなきゃな!」
わしゃわしゃと僕の頭をかき回して、僕と煌の足を縛っていた紐を解いてくれた。
クラスの待機場所に戻ると、皆から歓声を受けた。
さすが煌、やると思ってた、頼りになる、など、聞き取れないほどたくさんの…煌を讃える歓声。
僕は居てはいけない気がして、そっとそこから離れた。
木陰に腰を下ろす。
ふう、と息をついて遠くから煌たちを見つめる。
…僕の、入っちゃいけないクラスだったような気がする…
僕のせいで、不幸にしてはいけないクラスだった…
膝に顔をうずめる。
悪魔の印に災いあり…
「…まりも…」
地面に陣を書き、人型のまりもを呼び出す。
小さなとんがり帽子を斜めにかぶり、大きなカラフルなポンポンのついた髪ゴムで斜め上の髪を束ねている。
金に近いゆるゆるカールの茶髪が長く垂れている。
紫色の長いローブの隙間から、ピンク色のスカートやボーダーのニーハイが見える。
真っ赤な靴が、僕の前に立った。
「零、どうしたの?この姿の私を呼び出すなんて」
「…まりも…お願いがあるんだ」
「なぁに…?」
「僕を、ここから連れ出して欲しいんだ」
「え…っ、でも、零、煌は…」
「煌たちを、不幸にしてしまう前に…姿を消してしまいたいんだ。死ぬという形でも構わない…」
「零…自分が何言ってるか分かってる…?」
「分かってるよ、僕なんて…っ」
その時だった、きゃぁぁぁっと、つんざくような女の子の悲鳴が聞こえたと同時に、ドォンッと校庭のあちこちから爆発が起こった。
しん…と静まり返ったあと、皆が慌てて逃げ惑い始めた。
けれど、幾つもの爆発音、発砲音と共に悲鳴や泣き声があっという間に飽和状態になった。
「まりも…何が起こってるの…?」
「私にも、分からない…」
「…まりも、少しでも被害を減らすんだ!危ない人たちを守ってあげて!僕も頑張る」
箒を出してまりもが飛んで行ったのを見送り、僕も行くかと腰をあげた時、聞きなれない声で放送が入った。
『聞け!この学校に3週間ほど前空の力を持った悪魔の印が転校してきたと聞いた!そいつは今すぐに俺の元へくるんだ!来れば他の生徒にそれ以上の危害は与えない!来なければ皆殺しを覚悟するんだな!』
あぁ…湊人を捕まえにきたのか…
僕は溜息をつき、さあどうしたものかと歩き出そうとした時目の前に大型の熊ほどもある狼が立ちはだかった。
僕をやりにきたのか…と一歩後ずさると、その狼が口を開いた。
「零、俺だ」
「煌…?」
「あぁ、安全な場所まで逃げるぞ。俺の背中に乗れ」
「でも…」
「早くしろ、零」
頷き、よいしょと煌の背中に跨った。
ふさふさしていて、心地いい。
「捕まってろよ」
しゅたしゅたと、さすがは狼という速さで走る煌。
それに捕まっていると、すぐ前にうさぎやたぬき、猫、犬が走っていた。
それぞれ声から優斗、子里くん、姫川さん、寮長さんだと分かる。
「あんたも動物化しなさいよ、真白くん!」
桜子の鋭い声に僕は煌にぎゅうとしがみついた。
僕は…動物化できない…
「や、やめろ…来るな…」
「な…っ何とかしてくださいよ、悪魔の印なんでしょう!?」
湊人のお付きの人達が湊人に言う。
しかし肝心の湊人はただ震えるだけ…。
パンパンッと発砲音が続き、ひぃぃっと声にならない声をあげながら湊人が後ずさると、その冷や汗で化粧が剥がれ…
「み…湊人さん、それは…!」
「鷹…!?俺たちを騙してたんですか!?」
「もう付き合ってらんねぇよ!逃げろ逃げろ!」
「あっま、待て!」
湊人の制止も虚しく、湊人はあっという間に1人になってしまった。
「ほう…?俺らは嘘に踊らされてた訳か…」
「ごめんなさ…こんな事に、なるなんて…思ってなくて…!」
「許せるわけねぇよなぁ!なぁ、皆!」
鉄砲を持ったやつが湊人の周りへとぞくぞくと集まり、すべての鉄砲の先が湊人のほうを向いた…
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