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「零ちゃんっ」
泣く僕をまりもが押し倒した。
「ま、りも…?」
「零ちゃん、好きだよっ」
ちゅっと、頬で音がした。
「まりも…っ何…」
「こうのこと、守ったんだもんね…零ちゃんは優しくて、あたしの自慢のご主人様…」
「…僕はお前のご主人様なんかじゃないって」
「やだもんっ零ちゃん以外には絶対使役されないもーん」
「そうだ…また、ちゃんと小さく…」
「しばらくこのままでいいよ、あたし」
「でも…不便だろ?」
「零ちゃんは、今能力使わない方がいいよっ」
「ありがとう」
頭を撫でると、嬉しそうに目を細めた。
「真白くん…その人は…?」
「えっと…」
何と説明すればいいのか…
「この子は、まりも…。高等な、妖のうちの1人だよ」
「あ、やかし…?」
「そう、妖」
頷いて、まりもに挨拶は?と目を向けた。
「うー…」
「まりも、挨拶」
「…ミラナーシャです」
まりもがいやいや頭を下げた。
「僕はまりもって呼んでるんだけどね」
人間嫌いのまりもは、しかめ面をしたまま僕を見つめた。
「まりも、僕の化粧買って来てくれる?」
「…分かった」
頷いて、まりもは箒を持って廊下へ出て行った。
僕はそのドアが閉まるのを待って、口を開いた。
「…改めて、ごめんなさい…。僕の能力のせいで、闇に閉じ込めて危険にさらしてしまって…」
頭を下げて…そのまま言葉を続けた。
「お詫びに、僕にできることなら何でもします…。だ、だから…出来れば、僕のことは広めないでもらえると嬉しいです」
「頭上げてよ、真白くん」
「そうよ、誰もそんな風には思ってないわ」
小太郎と桜子の言葉に、頭を上げる。
「…あの、湊人くんは…?」
「そこ」
言われて目を向けると、ドアと壁の隙間に居た。
化粧を取り、本来の鷹の文字が頬にある。
「素直じゃないから心配でも端から見てるのよ」
「ふん…」
湊人はつかつかと歩いて来て、
「別にお前を心配してるわけじゃない」
と言った。
「うん…」
「だが、助けられたのは事実、だから…あ…あ、ありがとう」
「…!!」
ありがとうって、言った…?
今、僕に…?
あの、湊人が…?
「な…何だよ、そんな顔して」
「ううん…」
ゆっくり首を振って、ベットサイドにある化粧にを伸ばす。
みんながせっかく受け入れてくれたのだから、ここにいるだけの僕なりの努力をしなくてはいけない。
「零?べつに化粧しなくても良いぞ?」
「ううん…理事長室に行かなきゃ行けないから」
「理事長室?」
「うん…。僕は、そもそも不祥事の処理のために拾われたから仕事は果たさなきゃ…」
「零…」
「萊…理事長室に、僕が行くと通達を…」
ぱたぱたと僕の指に留まった萊は、なかなか飛び立とうとしない。
「…萊?」
「…零ちゃん、今、力使ったら…」
「…いいから、早く行くんだ、萊」
「…でも」
「しつこいぞ、萊。早く」
言われ、萊は渋々飛び立ち、窓を出た。
僕は鏡を見ながら化粧をしていると、煌に腕を掴まれた。
「…っ…何?」
「…俺がやってやる」
「え…」
ぎしっと音を立てて僕と向かい合わせにベッドに腰掛け、煌は僕の手から化粧道具を取った。
「目、閉じてろ…」
「い、いいよ…!僕、自分で…」
できる、と続けたかったのだけれど、其れより早く煌が僕の頬に白い粉を乗せた筆を当てた。
「ほら、目閉じて」
「ん…」
目を閉じると、煌がゆっくり丁寧に僕の頬に筆を走らせた。
「適当で良いよ…?」
「馬鹿、顔なのに適当にできるか」
「…うん」
煌の真っ黒な瞳に映った自分をしばらく見て、それから目を閉じた。
…この学校へ来て、煌と出会って、僕は変わったと思う。
僕だけじゃない、周りも。
「終わったぞ」
…それなら、僕は僕に出来ることをするために、ここにいるために、前に進むだけ。
「…ありがとう。行ってくるね」
小さく微笑むと、ベッドから立ち上がり、皆の視線を感じながらドアに手をかけた。
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