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「零、あなたは本当にいいこね。周りのお友達にも優しくできて、挨拶もちゃんとできるし」
「あぁ、近所でも明るくて元気だと評判だぞ」
「零は、私達の自慢の息子よ」
あぁ…このままこの幸せが続けばいいのに…
このまま、特殊な能力なんてなくていい、このまま幸せに暮らせたら…僕は…
しゅっと場面が一転する。
あぁ、これはいつか見た夢と同じ…
「早くあの役立たずのゴミを何処かへやってよ!」
「そんなこといったってなぁ、あんなもの一体どこの物好きが欲しがるんだよ!」
「あんたさえっ…あんたさえいなければぁぁぁ!」
投げられるおもちゃ、倒れる身体、降り注ぐ暴力。
やめて、やめてよ…
ねぇ…一体僕が何をしたの…?
しゅっと、再び場面が一転した。
「真白くん、どうしてみんなと仲良くしようとしないの?そんなんじゃ、誰も友達にはなってくれないわよ。自分から行動しなきゃ」
あぁ、これは…孤児院の先生だ…
ちらりと走り回る同年代の子達に目を移す…が
「おいっ…あの真白とかいうやつがこっち見てるぜ!」
「あの文字、呪われてて悪い心のやつにしか現れないんだってさ」
「暗くて薄気味悪いしなぁ…」
「いこうぜいこうぜ!」
誰も目を合わせてなんてくれなかった。
所詮僕は…
「んん…」
顔を冷たい何かで拭われる。
何…?
そぅっと目を開くと、目の前に煌の顔があった。
「…っ!?」
「おっ、気付いたか?零」
煌はそう言って、嬉しそうに笑った。
「僕、は…」
ゆっくり体を起こしながら記憶をたどる。
煌が起き上がるのを手伝ってくれた。
…そうだ、僕は…あと一歩で人を惨殺しようと…
ふと目を上げると、桜子、小太郎、寮長、優斗、人型のままのまりもが座っているのが目に入った。
皆、僕から目をそらしたり俯いたりしていて、とても僕が起きて良かったなどという煌と同じことを考えているとは思えない。
…僕、今まで騙してたんだ…皆のこと…
しかも、はじめて見せた僕の力を使う姿が、アレじゃあ…
…こんな雰囲気でも…仕方ない…か…
僕は辛くて、皆に申し訳なくて…
灰色の力を使って空気を固め、その上を駆け上がった。
頭が天井につくほど高く登って、そこで体操座りをする。
「あっ、おい、零!」
皆が驚いた顔をして、立ち上がる。
まりもが僕が駆け上がった空気に足を乗せ…空を切って足をおろした。
「あれ?零ちゃん、あたしにも登らせてよー!」
皆が見えないように、皆から顔が見えないように…
顔をうずめる。
…煌、来てくれないかな…
「あれ?俺だけここ乗れるぞ」
煌が、見えない空気の階段に乗る。
そのまま僕のところまで駆け上がってきた。
「零」
「…」
「俺に、来て欲しいと思った?」
「…うん」
頷くと、ひょいっと身体が宙に浮いた。
「こ、煌…!?」
「零、怖がらなくても大丈夫だよ」
「僕…怖がってなんか」
「怖いんだろ…皆が」
大切に大切に抱きしめられ、頬ずりされた。
「大丈夫だよ、零。俺を…俺らを信じて?」
「…煌…」
ぎゅうっと首にしがみつくと、煌は僕を抱いたまま皆のところまで降りた。
それから僕をベッドへ座らせた。
煌に促され、皆の顔を見やる。
「…あの…僕、は…」
「…悪魔の印、だろ」
寮長が僕の言葉を遮った。
僕はその冷たい目を見て…静かに頷いた。
「…すぐ、出ていきます…から。こうなる前に…出られたら良かったのに…」
じわりと熱くなる目頭を自分で止めることが出来ない。
俯いて、皆の表情が見えないようにする。
もう、見なくても、どんな表情してるかなんて…
「ごめんね…真白くん」
…子里、くん?
「真白くん、ごめんね。今まで、気付いてあげられなくて」
「…私も、全然知らずに…自分の得意分野をいかせとか…変なことばかり…」
「…僕も、何も知らなくて…」
「俺も…。これからは、知ったものとして、少しずつ心を開いてはくれないか…?」
子里くん、姫川さん、優斗、寮長が言う。
…僕と、まだ一緒にいるつもりなの…?
「今まで、たくさん辛い思いをしてきたのだろう…?」
「ぼ、僕は…」
「嫌われても恐れられても無い。お前を、零を受け入れてくれてるんだよ」
煌がそう補足して…
「…っ」
嫌われてなかった…よかった…っ
ぼろぼろと、今度は正真正銘泣いてしまった。
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