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朝、勢いよく扉が開く音で目が覚めた。
「おいっ!黒瀬、子里!真白君を知らないか!?」
部屋に飛び込んできた男の子…制服のネクタイから先輩だとわかる…が叫んだ。
僕は寝起きのぼーっとした頭で薄く目を開けたあと、耳に煌の心音が届くのに安心して、もう一度目を閉じた。
「何すか寮長…朝っぱらから…」
煌は僅かに体を起こし、肘で体を支えて目をこすった。
「黒瀬!おい、子里も!起きろ!」
「何だよー…」
小太郎がもぞもぞと起き出した気配がした。
僕は顔を反対側に向けると、煌の胸に額を擦り付けた。
…眠い…
「真白君知らないか!?他の部屋は全部回ったんだけど誰も知らなくて…!朝の点呼に行ったら既にいなかったんだ!」
「ちょっと静かにしてくださいよ…寝起きなんですよこっちは…。零が起きちゃうでしょうが…」
なでなでと大きな手が僕の頭を撫でた。
ぎゅっと煌のTシャツを握り込んで引っ張ると、逞しい腕で体を支えられて少し恥ずかしい。
「…こう…?」
「ん、おはよう零」
「おいこら黒瀬…寮に女連れ込むとはいい度胸だな…」
「はぁ…?」
煌は上半身を起こすと僕を膝に座らせて抱きかかえた。
「その子だよ!美人でも可愛くてもこの寮は男子専用だ!ベッドの中でなにしてたんだ!?」
「何って…寝てたんすよ…。つか、こいつっすよ、寮長が探してる真白零は」
「何言ってる、そんな言葉に騙されるか!」
「零、まだ会ったことなかったな?ここの寮長の、藤澤悠太先輩、三年生だ」
言われて仕方がなく目を開く。
煌にしがみついたままそちらに目を向けると、短髪にメガネのすごくしっかりしてそうな人が立っていた。
「…はじめまして…。真白零です…」
「…お、おとこ…?」
「当たり前でしょう、他に何に見えるんですか…」
呆れたように煌がため息を付く。
「ほら、零、部屋に戻って着替えて来ないと遅刻するぞ」
「ん…」
煌から離れると、ベッドから下りる。
大きすぎる煌のパジャマを引きずりながら煌の部屋を出た。
「なぁ煌っ?頼むから…!」
「だから断るってば」
「煌、考えとくって言ってくれたじゃないか…!」
「だから、考えた結果だよ」
「煌…!お前がいないと困るんだ!」
「俺二人三脚出るから時間的に無理だって」
「なんでお前みたいな運動神経良い奴がそんな運動神経無い奴でもできる競技に出るんだよ、!?頼む!この通り!」
そう言って、目の下に馬と書かれた男の子が煌に頭を下げた。
「だから、頼まれても困るって。そもそも出るなんて約束した覚えないし」
煌がそう言った時、がらりと教室のドアが開いて猿と書かれた男の子が話に乱入してきた。
「煌、やっぱお前しかおれへん!頼む、スウェーデンリレーのアンカーで出てくれ!」
「お前…ふざけんなよ!俺らが今障害物リレーに誘ってる最中なんだよ!」
「だったら煌くん、お願い!あたしたちと綱引きでて!」
「あ、ずるい!だったら学級対抗リレーにも…」
わらわらと皆が集まってくるのを眺める。
やっぱり人気者なんだなぁ…。
女の子の中には、煌がいるなら同じ種目にしたいと騒いでいる子もいた。
「だから、俺は二人三脚出るから出れないって言ってるだろ?」
「やめとけばいいじゃん!」
「そうだよ、もったいないよ!」
…。
……僕が、わがままを言わなければ…煌は自分の好きな種目をやれるのに…
何でもない、まだあって日も浅いのに、誰かに煌を取られてしまうような錯覚に陥る。
寂しい…。
皆に囲まれて少し困った表情を浮かべる煌。
……そうだ、体育祭の日は部屋で寝ていよう…
そしたら出なくて済む…。
煌も好きな種目に出れるし…
「煌…」
ぎゅ、と袖を握ると煌が僕を見つめた。
優しい優しい、目…。
「僕はいいから…他の種目、出てあげてよ…」
「ほら、真白くんもこう言ってるしさ!」
「そうだぞ煌、俺らとリレー出ようぜ!」
…取られて、しまう…
僕は何だかいてもたってもいられなくなって、教室を早足で出た。
煌が呼んでいる声が聞こえたけれど、僕は聞こえないふりをした。
「煌とごはんたべたなぁ…」
さわさわと気持ちがいい風が屋上を吹き抜ける。
僕は屋上の柵にもたれかかって座った。
「まりも…ねぇ…。僕…どうしたらいいの…」
「零…零、元気だして!」
小さな小さな手でまりもは僕の頬を撫でた。
「寂しい…」
「零…」
「なに独り言を言っているのかな」
聞いたことのある声に、頭をそっちに向ける。
懲りずに来たのは蛇3人組だった。
「今日は黒瀬と別行動みたいだねぇ…」
「調べたけど、白蛇なんて大した力無いみたいだな」
「絶体絶命だね」
シュルシュルと音がしてたくさんの蛇に囲まれた。
「今度は逃げられないぞ」
しゃがんで、蛇と目を合わせてみる。
操られているようだ…。
その中の一匹をそっと撫で、自分に攻撃の意思がないこと、敵ではないことを示す。
噛み付こうとした蛇は、動きを止めされるがままになった。
それから、そっと手から音波を発して蛇を操る音波を妨害する。
「なにしてんだお前、自分から噛まれに行くなんて…飛んで火にいる何とやらか?」
「…おいで」
そっと呼びかけると、蛇は喜んで僕の腕に巻きついて来た。
「お前たち…いいこだからもとの場所に帰りなさい。もうあんな奴らに捕まっちゃダメだよ」
僕の言葉に蛇は頷き、シュルシュルと屋上の柵から下へ降りて行った。
「なっ…貴様、何をした!?」
「何って…逃がしたんだけど…」
一匹まだ腕に絡みついているのでよく見てみると、白蛇だった。
「ここに残るの…?」
聞くと、蛇はさあ、と首をかしげて見せた。
「次は何…?」
三人に目を向けると、無力になった三人は慌てて逃げ出した。
蛇が僕の肩の上でざまあみろと言った気がした…
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