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side一期一振
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すれ違いというのが、こんな形で簡単に起きるものだとは考えもしなかった。
先日伝えられた部隊編成で鶴丸殿とは違う部隊に配属された。
鶴丸殿はまだ出会っていない刀達の探索を主にした部隊へ。
私は、今後夜戦に出向く予定の弟達の育成を手助けするために配属された。
離れたことで、一抹の寂しさと不安はあったものの、帰って来る場所は同じなのだから大した問題ではないと自分を鼓舞した。
会える機会は減るかもしれないが、全く会えないわけではない。
時には会話をし、少しぐらいは触れ合う時間もあるだろう、と。
けれど、実際は自分の予想を遥かに大きく越えていた。
もうあれから三ヶ月、彼の姿を見る日は数える程しかなかった。
「今から遠征かい?」
声の方を見ると鶴丸殿が笑顔で立っていた。
それだけで、自分の表情筋が緩んでしまいそうになる。
「えぇ、鶴丸殿は?」
「俺らは今帰ってきたとこだ。折角土産話もあるのに残念だ」
「それは、帰ったら是非聞かせてください」
「そうするとしよう。気をつけて」
「行って参ります」
久々にした会話はこの程度だった。
抱きつきたい衝動を抑え、寂しいということも出来ず、旅立つしかない。
他の者もいるから、二人の時にするような熱を帯びた会話など出来るはずがない。
それでも、顔を見て会話が出来ただけ、今日はいい日だと思えた。
最後に会話したのもこんな感じだったかもしれない。
もうずっと、挨拶程度の会話をすれ違いざまにしているだけの日々だ。
彼の言う土産話も、もう幾つ溜まってしまっていることだろう。
何か特別な諍いがあったわけではない。
揉めず、喧嘩もせず、仲は悪くない。
ただ、淡々と過ぎていく日々。
平素な会話と、適度な笑顔を送りあうだけの日々。
それだけのことが、自分の精神をこれ程痛めつけることになるとは想像していなかった。
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