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side鶴丸国永
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明け方遠征から帰ると、すでに一期が用意された馬に跨るところだった。
あぁ、また入れ替わりの出陣か。
部隊が変わってから、殆ど関わりがなくなってしまった俺達は、こういうすれ違い様に会話をする。
他愛もない会話。
それは俺にとってジレンマを含んだものだった。
多少の会話をしたところで、より距離感を感じてしまうだけだった。
ずっと同じ部隊で傍にいたからこそ、近くにいる機会も多く、一期は俺を知り特別と言ってくれた。
距離が出来れば、その感情が薄れていくのではないだろうか。
薄れていることを、会話から悟ってしまいそうで怖かった。
いっそ、会わない方が良いのか、とすら思ったこともあった。
その方がお互い傷を深くならないうちに「なかったこと」に出来るはずだ、と。
けれど、顔を合わせてそれを避けることは出来なかった。
声が聞きたい。
笑顔が見たい。
もう「なかったこと」になど出来ないことは気付いていた。
一期への感情は薄くなることはなかった。
それどころか、深く、一層濃く。
どうしようもなく、暗く汚い。
優しく名前を呼ぶ一期を求めて、無理にでも声をかけた。
「よっ」
「鶴丸殿、任務お疲れ様です」
「あぁ、一期も今からだろ?気をつけて」
毎回、似たような会話。
自分でもよくもここまで芸がないことを言えるものだと、辟易する。
本当はもっと気の利いた一言を、と思うのだが、あまり顔を合わせていない状態では、何を言えばいいのか皆目見当もつかなかった。
ほんの二言三言の会話で、一期を乗せた馬が自分の脇を擦り抜けて行こうとする。
「一期!」
思わず、呼び止めてしまう。
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