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side鶴丸国永
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慌しい昼過ぎを終えて、夕刻にはいつもの本丸の空気を取り戻しつつあった。
厨房から、夕餉のいい匂いが漂ってくる。
俺の部屋からは結構距離があるはずなのだが、風向きのせいだろうか。
通常なら、出陣する時間だが、今日の予定はもう無くなってしまっている。
しかし、今日の事を思うと退屈しのぎの悪戯をする気も起きなかった。
庭先から短刀達の明るい声も聞こえて来ないのは、おそらくまだ一期の様子が芳しくないからなのだろう。
一期は、渡した手伝い札をちゃんと使ってくれただろうか。
意識も朧だったし、誰かが気を回してくれれば良いが。
「鶴の旦那、ちょっといいかい?」
「薬研か。いいぜ、入れよ」
薬研は片手ですっと襖を開く。
「悪いな、時間あるか?」
「あぁ、問題ない。出陣も取り消しで丁度退屈していたとこだ」
「そうか・・・今日は、いち兄を助けてくれて、感謝申し上げる」
畳に頭をこすりつけて、感謝の言葉を述べる薬研。
「やめてくれ、子供にそんな真似されるのは好きじゃない!」
そう言うと、薬研はゆっくりと頭を起こし、まっすぐに俺の顔を見る。
正座は崩さず、ピッと背筋を伸ばしたままだ。
一期は無事なのか。
薬研の言葉からそれが分かっただけでも、俺は安堵した。
良かった。
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